硫化水素に対する危機管理:「六一〇ハップ」と「石灰硫黄合剤」の販売規制を

硫化水素による自殺が、後を絶ちません。2007年にはゼロだったものが、今年はもう既に、報告されているだけでも数十人が亡くなっています。ネットという空間で、硫化水素による自殺がトレンドになり、その方法までもが丁寧に解説されていることが、急増の要因です。瞬時に情報を得られるインターネットは、この上なく便利で、いまや私たちの生活にはなくてはならないものになっていますが、合わせて、有害情報もフィルターにかけられることなく、簡単に流出・入手可能です。周囲の誰にも相談されないまま、ネット上にあるプロトコール通りの手順をふむことによって、硫化水素による自殺は実行されるのです。

特に、今回の問題点は、硫化水素ガスを発生させるための必要な薬品が、容易に手に入るという点です。今更隠しても意味がないので書きますが、硫化水素を発生させるために繁用されている商品とは、トイレ洗剤として有名な9.5%の塩酸を含む「サンポール」と、硫黄・生石灰・カゼイン・硫化カリを過熱溶解した、昔から馴染み深い入浴剤である「六一〇ハップ(ムトーハップ)」です。この2つの商品を混合すると、イオウイオンと水素イオンが結合して、硫化水素ガスを発生するのです。他にも園芸用の農薬など、代用品は幾つか存在します。

硫化水素ガスの最大の問題点は、自殺する本人だけの問題にとどまらないことです。どんなに目張りを厳重にしても、ガスは眼に見えない隙間から外部に漏れてしまいます。周辺にいる一般市民が、硫化水素と知らず吸ってしまい犠牲になる可能性は、言うまでもなく非常に高いのです。実際、事件現場では、周辺の人々が異臭を感じ、警察に通報しています。

このような状況の中、不作為を決め込む政府に、私は苛立ちを覚えます。一刻も早い対応が必要です。このまま傍観し続ければ、近い将来、自殺の巻き添えとなる一般市民が出かねません。私には殆ど縁のないホテルですが話題のペニンシュラや、一般向けのビジネスホテルでも事件は起こっています。自殺を食い止めるためにも、また、一般市民を巻き込まないためにも、政府は緊急の策を直ちに講じなければなりません。

当事者は「自殺」という意識で決行するのかもしれませんが、周辺を巻き込みかねない硫化水素による自殺は、地下鉄サリン事件をほうふつとさせる、一種の個人的テロ行為です。「テロ」を未然に防ぐためには、硫化水素を発生させる商品の販売をコントロールするしかありません。強力な酸と反応して硫化水素を発生させる「石灰硫黄合剤」に、販売規制の網をかけるしかないのです。

農作物の害虫駆除に繁用される「石灰硫黄合剤」は、農家にはなくてはならない農薬ですが、農作業とまったく無縁の人間が、必要とするものではありません。薬局・薬店・ホームセンターなどの販売自粛に頼るのではなく、政府は、その責任において直ちに、「石灰硫黄合剤」を厳重に管理しなければならないのです。それはまさに、政府の危機管理そのものです。農業のことを何も知らない人間が「石灰硫黄合剤」を購入しようとしていないか。多少手続きが煩雑になったとしても、購入の目的を正確に確認するしか方法はありません。この際、入浴剤の「六一〇ハップ」の販売は、一定期間停止すべきです。

一歩間違えれば一般市民を巻き込む可能性のある、テロ行為とも言える硫化水素ガスによる自殺に対して、不作為の政府では政府たる資格はありません。速やかな危機管理体制が求められています。対岸の火事のごとく、心のない発言ばかりが目立つ福田総理に、本気すなわち国民本位の政治を期待しても空しいばかりですが、只今現在の権力はその福田総理にあります。福田総理の迅速な決断を待つしかないのですが、事態に一刻の猶予もありません。福田総理の危機管理能力が問われていることに、当の本人は気付いているでしょうか。

民主党は、「六一〇ハップ」の販売停止と、「石灰硫黄合剤」の販売規制を、直ちに政府に求めるべきです。
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