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「患者参加型医療は実現可能」―医療安全推進週間でシンポ

 医療安全推進週間の一環として、厚生労働省は11月24日、公開シンポジウム「患者・市民の医療参加とパートナーシップ」を東京都内で開いた。ノンフィクション作家の柳田邦夫さんは「医療者と患者市民の協働の可能性」と題して講演し、安全医学を学問として確立させることや医療安全啓発センターの創設などを提案した。千葉県東金市のNPO法人(特定非営利活動法人)「地域医療を育てる会」(相京邦彦代表)など4団体はそれぞれ活動内容を報告。相川さんは「地域医療を育てるということは、“その地域に腰を据えてきちんと(言いたいことを)発言する医師”と“医療再生のために自分に何ができるかを考え、行動していく住民”の両方を育てることだ」と述べた。また、「“患者の医療参加”を考える」と題したパネルディスカッションも行われた。


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 柳田さんは講演で、「(医療事故などの)被害者家族の経験は、負の遺産でもあるが、同時に貴重な知的財産だ」として、医療の安全と質を高めるために被害者家族の声を生かしていくことが重要だと繰り返し強調した。また、医学・薬学の一分野として「安全医学」の科目を確立させることを提案した。

 NPO法人「地域医療を育てる会」の相京さんは、医師を地域ぐるみで育てる取り組みを紹介した。相京さんは、「医療側は、地域住民(患者)に対して、若手の医師(の成長)を見守ってほしい、若手の医師を受け入れてほしいと思っている。一方、患者側は、ベテランの医師に診てもらいたい、きちんとコミュニケーションができる医師に診てもらいたいと思っている」と双方のニーズが相反していると前置き。それを踏まえ、同会は研修医を招いてディスカッションするなど、医師と住民が地域医療の課題を共有して解決を図る努力を続けているとした。
 兵庫県のNPO法人「県立柏原病院小児科を守る会」の丹生裕子代表は、柏原病院小児科への寄せ書き贈呈、感謝のメッセージを投函するポストの創設、地域医療をテーマにした勉強会の開催、マグネットステッカーや冊子の配布などの活動内容を紹介した。同会は、▽コンビニ受診を控えよう▽かかりつけ医を持とう▽お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう―をスローガンに活動を続けている。
 京都府のNPO法人「医療情報の公開・開示を求める市民の会」の勝村久司さんは、「最近話題になっている救急患者のたらい回し、事故隠し、一人医師体制による陣痛促進剤被害などは20−30年前からあった」と指摘。被害を繰り返さないためには、▽健全なチーム医療体制の確立▽医療界内部の民主化▽患者・家族を含めた情報共有―が大事だと主張。また、「不明瞭なレセプト(診療報酬明細書)は保険制度の崩壊につながる。みんなの財産(医療費)を有効に使うためにも、消費者側から改革していく必要がある」として、レセプト開示の徹底が医療再生につながるとの考えを示した。

 パネルディスカッションでは、日本対がん協会の開原健夫常務、九州大大学院医学研究院の鮎澤順子准教授、社会保険相模野病院の内野院長が「患者の医療参加」についてそれぞれ意見を述べた。
 鮎澤准教授はまず、「多くの病院、診療所、その他の医療の現場で、ほとんど活用されないままになっている重要な資源は患者である」というアメリカの医療現場から発信されたメッセージを紹介。その上で「目指すべきは(患者の)『納得』、続けなければならないのは(医師と患者の)『対話』。そして、『共に創る』という意識改革が必要だ」と強調した。
 内野院長は、「医療従事者が(患者に対して)真摯に向き合う」「嘘をつかない、ごまかさない。真実を説明する」など社会保険病院グループで実施している対応指針を示した。その上で「施設全体で(患者参加型医療に)取り組んでいく姿勢を示す必要がある。医療従事者が真実を語り、正確な説明と質問への回答、情報開示を続けていくことで患者との信頼関係が構築される」と述べ、患者参加型医療が実現可能だとの見解を示した。

 厚労省は、医療関係者や国民の医療安全に関する意識向上を図るため、11月25日を含む一週間を「医療安全推進週間」に定めており、期間中はシンポジウムなどの行事を開催している。今年は23日から29日が同週間に当たる。


更新:2008/11/25 12:15   キャリアブレイン

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