送検のため警視庁を出る小泉容疑者を乗せた車(24日午後、東京・警視庁前で)=杉本昌大撮影 |
元厚生次官宅襲撃事件で、「事務次官を殺した」などと供述している無職の小泉毅容疑者(46)(さいたま市北区)は3年前、自宅近くでタクシーと接触して軽傷を負ったとして約1年間、保険会社の負担でほぼ毎日、タクシーで病院通いを続けていた。
同容疑者が今の自宅アパートに一人で暮らし始めたのは10年前。定職に就いている様子もないのに、家賃の支払いが遅れることもなく、生活保護も受けていなかった。警察当局では、不可解な供述を解明するため、これまでの生活ぶりについても検証する考えだ。
事故があったとされるのは2005年12月1日午後4時45分頃。場所は、小泉容疑者の自宅アパートから東に約200メートルのさいたま市北区の県道交差点だった。
この時のタクシー運転手(58)によると、同容疑者は両手に紙袋を提げ、ゆっくりした足取りで信号機のない横断歩道を横断しており、運転手は、渡り終えたのを確認してから、徐行して通り過ぎようとした。ところが同容疑者は横断歩道を突然、引き返し、車のボンネットをたたいて、サイドミラーをねじ曲げながら「当たったぞ、足が痛い」と主張。「慰謝料として3000円を出せ」と要求し、運転手が断っても執拗(しつよう)に「謝れ」と言われ、最後は路上で土下座させられた。小泉容疑者は約10分後、救急車が到着する前に歩いて立ち去ったという。
運転手は業務中の違反歴がない経験10年以上のベテランで、「絶対に接触していない。当時は客を乗せており、渋滞を招いてしまったので仕方なく従った」と話している。
この運転手が勤務するタクシー会社によると、小泉容疑者はこの事故で、「全治1週間から10日」とする医師の診断書を持って大宮署に被害届を提出。その後、小泉容疑者からタクシー利用の申し込みが連日、来るようになった。配車先は、診断書を出した同市北区内の総合病院や自宅、調剤薬局など。自宅から病院までの料金は片道1500〜2000円だった。半年後、保険会社から「完治したのではないか」と指摘されると、小泉容疑者は同市大宮区内の個人病院から診断書を取り直し、通院は1年近くに及んだという。
タクシー会社内では同容疑者の名前は知れ渡っており、ある運転手(59)は「ほぼ毎日、無線で『小泉』の名前を聞いた。私も実際、数十回は乗せた」と話した。病院帰りに4〜5回乗せた運転手(64)も「帰りは自宅ではなく、いつも近所のショッピングセンターで降りた。車内ではむっつりと黙り込んでいた」と振り返った。
近所の住人の話では、小泉容疑者は日中、トレーナー姿でバイクなどに乗って出かけていることが多かった。ただ、時間は決まっておらず、「仕事をしているようには見えなかった」という。大家の話では、今のアパートには1998年8月から住んでいたが、月6万2000円の家賃を滞納したことは一度もなかった。同市関係者によると、生活保護の受給者でもなく、小泉容疑者がどうやって生計を立てていたかは不明だ。
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