地域はそれぞれに「食」の課題を抱えている−。そんな実態が、今年の食育白書から見えてくる。地域食料自給率を向上させ、住民の健康増進を図る。食育推進は地域が自立するための糸口だ。
食育白書は、食育を進める上での指針として、肥満者の割合、野菜の摂取量、運動量(歩行数)、子どもの朝食欠食状況など、十項目を挙げている。
それらの現状を示すため、全国平均より都道府県別の違いを白書は重視する。
例えば、男性(二十−六十九歳)の肥満率が最も高いのは沖縄の46・7%で、最も低い島根とは30ポイント近くの開きがある。男女とも肥満率は都市部で低く、これは一日の歩行数の多さと相関する。
一日の野菜摂取量は、岩手、宮城、秋田といった東北地方で多く、東海地方以西で少ない。どの指標でも地域差が明白だ。
白書から読み取れるのは、食育の推進には、自治体、あるいは地域の取り組みを重視しなければならないということだ。
自治体ごとに、健康で安全なまちづくりの柱に据えて、総合力で取り組むことが望ましい。
食文化や食生活は、地域の風土や習慣と密接に結び付いているからだ。全国一律の“指導要領”で背中を押しても、地域の「やる気」は引き出せない。
愛媛県今治市は、食育基本法制定以前の一九九八年から「安全な食べ物による健康都市づくり戦略」を打ち出して、有機農業による地産地消を進めてきた。
二〇〇六年には「今治市食と農のまちづくり条例」を定め、食育を生産と消費の問題だけにとどめずに、足元の文化や伝統を見直して、地域の自立につなげようという方向性を明らかにした。
有機農業を進める中で、うずもれていた資源や人材を掘り起こし、風土に見合った食文化を取り戻す運動に、地域ぐるみで取り組んでいる。
また、食品の生産や流通関連以外のさまざまな企業や団体に、積極的な参加を求めたい。
愛知県歯科医師会は「歯の健康は食育への出発点」との立場から、積極的にかかわりを強めていくという。
白書によると、食育基本法が求める推進基本計画は、本年度中に全都道府県が策定を終える見通しだ。しかし、市町村レベルでは15%にとどまっている。まちづくり、住民参加の観点から、市町村独自の目標を掲げてもらいたい。
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