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【主張】APEC 危機克服へさらに努力を
太平洋を囲む世界最大の地域協力の集まりであるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の今年の首脳会議がペルーの首都リマで開かれ、「世界経済に関する特別声明」(リマ声明)と包括的な「首脳宣言」を採択して閉幕した。
先週のAPEC閣僚会議に続くものだが、当面の金融・経済危機をはじめ地球温暖化対策などの幅広い分野にわたり、加盟21カ国・地域の首脳レベルで危機克服に向けた強い決意が表明された意味は小さくない。
とりわけ特別声明では「今後18カ月で危機を克服できると確信している」と強調する文言が草案に追加された。
焦点となっていた世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の年内合意については「誓約(コミット)する」と踏み込んだ。金融サミットや閣僚会議では「努力する」にとどまっていた点だ。
首脳たちの指示を受ける形で、ジュネーブでは12月19日から急遽(きゅうきょ)、WTO閣僚会合が開かれる方向も固まった。
7年の長期に及ぶドーハ・ラウンド交渉は、今年7月の閣僚会合で決裂して以来、早期合意が絶望視されていた。それだけに、金融危機をきっかけにした保護貿易主義反対、貿易拡大への政治的意志の高まりを歓迎したい。
ただ、合意には各国の犠牲と譲歩が欠かせない。各国は国内調整を急いだうえ、合意を最優先に交渉に臨むべきだ。「WTO大枠合意」となれば、景気の下支えに大きな力となる。
来月に相次いで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)を軸とした一連の国際会議や日中韓首脳会議などでもこの勢いを継続してほしい。危機克服への努力はなお必要だ。
今回のAPECでは、アジア太平洋地域貿易圏(FTAAP)構想など地域統合の推進や気候変動問題への取り組みなども議論された。日本は2010年のAPEC議長国だ。一段と戦略的取り組みが重要となろう。
リマでは日米、日米韓、日露、日中などの個別首脳会談も行われた。北朝鮮核問題で検証のあり方を文書化することで合意した点は評価していい。しかし、日中会談は中国側の都合で二転三転し、翻弄(ほんろう)されたという。外交上の礼は決して軽視されてはならない。