米政府は23日、米国の最大手銀行であるシティグループの救済策を発表した。同行が抱える3060億ドルの不良資産の大半を財務省などが事実上保証するとともに、新たに200億ドルの公的資金を注入する。
米国を代表する金融機関の救済措置は、これまで政府が取ってきた金融安定化策の不十分さを示しており、米国の金融安定化へ向けた道はなお険しいことを浮き彫りにした。
金融システムが安定しない限り米国経済の悪化は止まらない。米政府には市場が安心できるような抜本的な安定化策を示す責務がある。
シティグループの救済策で保証対象になるのは、値下がりが著しい住宅ローンや商業用不動産ローンを裏付けとする証券化商品などだ。これらがこげついたときに生じる損失額のうち最初の290億ドルをシティが負担。これを超える分の大半を財務省や米連邦預金保険公社(FDIC)が負う。
救済策はシティグループの株価が経営不安から急落するなかで決まった。3月の大手証券ベアー・スターンズの救済や、9月のリーマン・ブラザーズの破綻を受けた金融安定化法制定と同様、後追い型の対応だ。
金融安定化措置を巡る米当局の対応が揺れたことへの不信感がシティの経営不安につながった面もある。
ポールソン財務長官は最近、米金融安定化法で利用が認められた最大7000億ドルの公的資金について、当初の目的であった不良資産の買い取りには使わないと表明した。この後、証券化商品の価格が下落したほか、シティなどの株価が急落していた。不良資産が金融機関の帳簿に塩漬けになるとの懸念が強まったためだ。
今回のシティ救済は、米国の金融システムが抱える問題の大きさを改めて示している。米金融安定化法に基づいて大手行に公的資金が注入されてはいるが、そうした対応だけでは不十分なことがはっきりした。
ほかの金融機関も多かれ少なかれシティと同様の問題を抱えており、追加的な公的資金の注入や、今回シティに適用したような不良債権の損失保証の拡大は必至である。
また、金融危機の影響で動きがほとんど止まっている住宅ローンや消費者ローンの機能回復や、住宅ローンの借り手救済にも公的資金を活用する必要が出てきそうだ。
いずれにせよ、危機のたびに対策を打ち出すようなやり方ではいつまでたっても市場の不安感は収まらない。米政府は問題の大きさに十分対処できる包括的な金融安定化策を早急に示すべきだ。