ペルーの首都リマで開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が閉幕した。金融危機への対応が焦点となった今回の会議では、首脳宣言のほかに世界経済についての特別声明を採択。金融危機克服に向けた包括的な協力や保護主義の回避などを打ち出した。
1週間前に米国で開催した20カ国・地域(G20)による緊急首脳会合(金融サミット)に続き、アジア太平洋地域の21カ国・地域が集うAPEC首脳が金融安定化への強い決意を表明した意義は大きい。
特に特別声明は保護主義を回避すべく今後1年間は投資・貿易に新たな障壁を設けないとした金融サミット宣言を追認した。世界貿易機関(WTO)多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の年内の大枠合意を誓約し、金融サミットの宣言より一歩踏み込んだ。
金融危機の影響が実体経済に波及するなか、保護主義的な動きにつながる危険を各国とも強く認識している。重要なのは合意内容にいかに実効性を持たせていくかである。
7月の閣僚会合で決裂し、年内合意が絶望視されていたWTOドーハ・ラウンドは、合意への機運が再び盛り上がってきた。だが決裂の原因となった農産品の緊急輸入制限(セーフガード)の扱いや米国の農業補助金など、農業問題を巡る米国と中国、インドの対立は解けていない。
痛みを伴う貿易障壁の撤廃は決して容易ではないが、保護貿易を排し、自由貿易を推進することが長期的に各国の利益になることを再認識すべきだ。利害対立を克服して何とか妥協点を見いだしてほしい。日本も農業分野の防戦に躍起になるだけでなく、先進国と新興国の調整へ指導力を発揮すべきだろう。
APECは世界貿易の5割近く、世界の国内総生産(GDP)の約6割を占める。地域経済統合の加速化も今後の大きな課題だ。長期的にはアジア太平洋自由貿易協定(FTAAP)構想の具体化に向けた検討も進める必要がある。
APECは先進国が2010年までに貿易・投資の自由化を達成する「ボゴール宣言」を採択している。同年のAPEC議長国は日本である。その責任は重い。