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社説:税収大幅減 財政再建で踏みとどまれ

 09年度予算編成が本格化してきた。麻生太郎首相は中川昭一財務相、鳩山邦夫総務相らに生活防衛、地方活性化、国際貢献への重点配分を指示した。景気が後退局面に入っていることや、今年の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)やアフリカ開発会議(TICAD4)などでの開発援助増額公約などを受けている。

 その財源手当てはできているのか。全くめどが立っていないのが現状だ。

 08年度の一般会計税収は当初見込みの53兆5000億円を6兆円以上下回ることが確実な情勢になっている。今後の景気次第では減収幅の拡大もある。09年度の景気は「プラス成長に自信がない」(与謝野馨経済財政担当相)というように、08年度より悪化する公算が大きい。税収は前年度水準の確保がやっとだろう。

 税外収入や特別会計の積立金を見込んでも歳入不足の解消は不可能である。赤字国債の増発が不可避ということだ。世界的な景気後退の中でもあり、財政赤字が一時的に増えることは受け入れざるを得ない。問題は、そこで踏みとどまることができるのかである。

 国債の増発に抵抗がなくなれば、財政規律は一気に弛緩(しかん)し、財政悪化が加速した90年代後半の再来となってしまう。そうしないためにやるべきことは何か。

 第一は、財政投融資特別会計の金利変動準備金の流用や積立率の引き下げなど、小手先の国債減らしは最小限にとどめることだ。一見、国債発行額を抑制しているようにみえるが、本来、国債残高減らしに回るべき財源を使っているのであり、国債発行と何ら変わりはないからだ。

 第二は、財政健全化への展望を偽りなく示すことだ。07年度からの財政事情悪化で、11年度に増税なしで国、地方合わせた基礎的財政収支黒字化を達成することは不可能な情勢にある。この目標を象徴的に残すことはいいにしろ、事実を認めることから始めた方がいい。

 そこで、財政健全化にむけていつから、どのように反転するのか、基礎的財政収支黒字化のめどはいつなのか、国債発行をどう削減していくのかなどを、国民に示さなければならない。現在、経済財政諮問会議を中心に策定が進められている中期プログラムや年明けに決定する「経済財政の中期方針」は、財政健全化の具体的工程を示すものでなければならない。

 第三は、歳出改革は事業の具体的内容にまで踏み込まなければならない。税収が6兆円も見込みを下回る非常事態に、通り一遍の歳出削減では問題にならない。新たな事業を盛り込むためにも、徹底的にメリハリをつけることが必要だ。

 大幅税収減を赤字国債増発だけに終わらせてはならない。財政再建への出発点にしなければならない。

毎日新聞 2008年11月25日 東京朝刊

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