diaria soliloquia 日々独白

2007年10月31日(水)曇

朝の出勤の直後から面倒な仕事の連発で、心身ともに疲れ果て、帰宅して間もなく寝てしまっていた。強制終了と云わなければならない。起きたのは翌朝、十一月一日の朝六時だった。ゆえに一日遅れての記載(十一月二日の〇時四十八分頃、記之)。

日本テレビ系。水曜ドラマ「働きマン」。

原作:安野モヨコ。脚本:吉田智子。主題歌:UVERworld「浮世CROSSING」。演出:佐久間紀佳。第四話。

大手出版社というのは所謂「就職戦線」では放送会社等と同じく超難関であるはずで、それに相応しく公務員なんかの三四倍もの高収入を約束された安定した職業であるだろう。その分、世に評判の悪い公務員の世界においてさえ考えられないだろう程に仕事を舐め切ったような甘えた雑誌編集者がいたとしても不思議ではないが、それにしても渚マユ(平山あや)は非道い。私的な好みをそのまま仕事にしまえると本気で考えていたのは新人の甘さを露呈したに過ぎないが、仕事を放棄しても許されるという自信は社会人として失格だ。それに比すれば田中邦男(速水もこみち)でさえ、意欲の湧かない仕事であろうとも放棄することがない点だけ考えても、社会人として健全であると云える。彼の失敗や欠点は新人の甘さを露呈したに過ぎないから、仕事を続けて経験を重ねてゆけば払拭できる程度のものだが、渚マユのは少なくとも一般社会では新人であっても決して許されることではない。それとも出版業界ではあれもアリなのだろうか。

2007年10月30日(火)曇

日本テレビ系。火曜ドラマ「有閑倶楽部」。

原作:一条ゆかり。脚本:江頭美智留。音楽:山下康介。主題歌:KAT-TUN「Keep the faith」。演出:大谷太郎。第三話。

松竹梅魅録(赤西仁)が病院のベッドの鉄パイプに頭を打つけて痛がっていたのは、実に珍しく迫真の演技だったと評してよいだろう。というか演技ではなく本当に痛がっていたようにさえ見えた。

今回は失踪する花嫁=吉乃川あゆみ(入山法子)の元恋人=玉司聖二役で忍成修吾が出演。悪役でもなければ影もなく三枚目でもない男子の役。

見ていて不図思うに、このドラマの制作者は漫画という二次元の世界をそのまま三次元に置き換えたような感じの作品に仕上げたかったのではないだろうか。静止画像として見るなら様になっていたろうと思われる絵が認められることから、そのように推察される。そうであれば演者も当然その方針に沿って仕事しているはずで、実際、松竹梅時宗役の鹿賀丈史や剣菱悠理役の美波は無論のこと、美童グランマニエ役の田口淳之介等もそのように努めていると見て取れる。しかるに赤西仁は主演俳優でありながら多分どこか別の方角を向いているようだ。

2007年10月29日(月)曇

フジテレビ系。月九ドラマ「ガリレオ」。

原作:東野圭吾「探偵ガリレオ」「予知夢」。脚本:福田靖&古家和尚。音楽:福山雅治&菅野祐悟。主題歌:KOH+「KISSして」。演出:成田岳。第三話。

物理学的に説明できる現象というのは同一の条件が揃えば繰り返され得るはずであり、その意味では奇跡ではないだろうが、問題は同一の条件が揃い得るのか否かという点にあり、仮に同一の条件が揃うこと自体が奇跡的であるなら、やはり当の現象も奇跡的であることになるだろう。実のところ物理学者の湯川学(福山雅治)が明晰に解明してみせた高野ヒデ(森康子)宅のポルターガイスト現象の真相は、実験室において再現され得る単なる物理現象であるとはいえ、それを発生されるための条件があのように揃ったのは殺人事件に伴う偶然の変化の産物であり、極めて奇跡的な事象だったと云うほかない。あたかも重大な事件の在り処を内海薫(柴咲コウ)等に伝えようとしていたかのようではないか。そう考えるなら、現象の現場において殺害されていた神崎直樹(渡辺裕樹)の妻、弥生(広末涼子)が、亡き夫の魂をそこに感じ取ったのは正しいのかもしれない。

それにしても村瀬健介(林剛史)と神崎弥生は全く似ていない姉弟だ。

2007年10月28日(日)晴

NHK大河ドラマ「風林火山」。演出:田中健二。第四十三回「信玄誕生」。

山本勘助(内野聖陽)が、養女に迎えた原虎胤(宍戸開)の娘リツ(前田亜季)の婿殿として想定していたのは、家臣の葛笠茂吉(内野謙太)や河原村伝兵衛(有薗芳記)だったのか。何と云うか、非道い。茂吉が謹んで山本家の婿になろうとしていたのも、父の太吉(有馬自由)が喜んだのも当然だろうが、太吉の妻おくま(麻田あおい)が反対したのには驚いた。とはいえ、なるほど葛笠家も今や甲斐の軍師の家臣として武家と化したわけなので、茂吉は大切な跡取なのか。リツ姫を葛笠家の嫁に迎えるなら兎も角、その逆に長男を山本家の婿に差し出すことなど考えられないことだったのだ。こうして貴族的な「家」の論理が下々にまで普及してゆくものなのか?と考えると一寸面白い。

武田晴信(市川亀治郎)は、日本国王=将軍足利義輝の命により、越後の長尾景虎(Gacktガクト)と和睦せざるを得なくなったが、その際、条件として信濃国の守護の地位を獲得した。景虎の御得意の「義」を地位として先取した格好だが、これに対抗すべく上杉憲政(市川左團次)は景虎を上杉家の養子として迎えた上、関東管領の職を譲った。これには打算もあった。宿敵の北条氏康(松井誠)を打倒すべく長尾家の力を利用したかった上杉憲政は、景虎が武田家との軍にばかり夢中になっている現状に焦り、何とかして一刻も早く北条討伐に向かわせるため、関東管領にすることによって関東の平定を義務付けたかったのだ。馬鹿殿にしては実に深い考え。しかし景虎は一枚上手だった。彼は既に京の将軍家から絶大な信頼を得ていて、関東管領の地位のみを得ることよりも、むしろ関東管領の権威の源泉としての足利将軍家から直々に権威を付与されること、延いては将軍の権威の源泉としての京の禁裏の天子から権威を付与されることを望んだのだ。のちの織豊時代には天子の権威が強大化し、徳川家康と秀忠の父子はそれを抑制するのに苦労させられるわけだが、戦国の乱世におけるそうした朝廷の力の回復がどのようにして生じたかを表現するかのようで実に面白い場面だった。

ところで。

テレビ朝日系「仮面ライダー電王」。田村直己演出。第三十九回「そしてライダーもいなくなる」。

桜井侑斗(中村優一)消滅。カイ(石黒英雄)の陰謀によって、高校生時代の侑斗が敵イマジンの攻撃に巻き込まれて殺害され、大切にしていた望遠鏡も焼失。そして侑斗も消滅した。余りにも恐ろしく、悲しい展開。予て仮面ライダーゼロノス変身のため自身に関する周囲の記憶を消費してきた彼は、野上良太郎(佐藤健)の反撃によって卑劣な敵イマジンが消去され、破壊された時間が復旧したのちも、誰にも想起されることがないまま、一人だけ復旧され得なかった。桜井侑斗という一人の人間が、そもそもこの世に存在していなかったことにされてしまったのだ。所謂「特異点」の良太郎とコハナ(松元環季)は彼を記憶していても、他の誰もが憶えてはいない。彼の婚約者であるはずの野上愛理(松本若菜)でさえ。実に恐ろしい事態だが、それに先立ち、凍て付く程に寒々しい場面のあったことがこの事態を予測させてもいた。敵イマジンの過去への入口として侑斗の高校時代の天文部顧問教諭が利用されたとき、侑斗は恩師の許に駆け寄り、声をかけたが、恩師であるはずの教諭は侑斗を知らなかった。その寒々しい孤独感、悲しさ、恐怖は、それに先立つデネブ(声:大塚芳忠)と侑斗の楽しい買物の場面との対比によってさらに強調されたのだ。

とはいえ、かのピアノ男の例から考えるなら、誰にも想起されなかった侑斗は、誰かに想起されるまでの間、時間の漂流者として、旅人として生きることになるはずだろう。そのあたりがどのように描かれるのかを期待しよう。

2007年10月27日(土)晴

日本テレビ系。土曜ドラマ「ドリーム☆アゲイン」。

脚本:渡邉睦月。主題歌:コブクロ「蒼く優しく」。協力:読売巨人軍。制作協力:アベクカンパニー。演出:長沼誠。第三話。

藤本雛(志田未来)をめぐる騒動の中で朝日奈孝也(反町隆史)の見せた言動を二ノ宮颯乙(加藤あい)が想起していたとき、脳裏に浮かんだ彼の姿は小木駿介(反町隆史)だった。そのことの意味は深い。視聴者にとって朝日奈孝也の姿が小木駿介であるのは、落雷で落命した小木が同じ頃に病没した朝日奈の身体を借りて復活した事情を分かり易く表現したものであるし、また視聴者への視覚的サーヴィスという面も無論あるだろうが、劇中の、天国庁の官吏=田中(児玉清)以外の全ての登場人物の眼に見えている朝日奈は、小木駿介とは何一つ共通点のない中年男、腹の出た眼の細い中年男でしかないのだ。視聴者にとっての朝日奈は、何をやらせても愛嬌のある青年だが、劇中の人々にとっては威圧感のある嫌な中年なのだ。もちろん二ノ宮颯乙にとってもそうだ。それにもかかわらず事件のあとに想起した朝日奈の姿は朝日奈ではなく小木だった。朝日奈の言動の一つ一つが小木を想起させないではいないことの見事な表現であると見なければならない。

ところで。

今日の夕方NHK総合で放送された「第61回全日本体操選手権」を録画しておいたのを見た。優勝者は冨田洋之選手。最終種目の鉄棒で見せた彼の演技は、素人の眼にも圧倒的な貫禄を感じさせた。米田功選手は肩の手術等による長期間の休養から漸く復帰を果たしたところだったようだが、跳馬で高得点を獲得して二十四位から九位まで一気に上昇し、結局、最後には八位に付けていたのが凄い。豊富な経験と実力ある選手ならではの追い上げと云えるだろう。冨田洋之の傍らにいた美男子は、かつて学生時代の米田功のライヴァルだった斎藤良宏だったろうか。九年前には頼りなさそうに見えていた米田功も三十歳。冨田洋之でさえ二十六歳。今回は彼等に続くべき大学生が多く出ていたが、中で日本体育大学の沖口誠選手は米田功に少し似ていた。そして冨田洋之の窮屈そうな胸元には見入った。

2007年10月26日(金)曇一時雷雨

TBS系。金曜ドラマ「歌姫」。

脚本:サタケミキオ。主題歌:TOKIO「青春(SEISYuN)」。制作:TBSテレビ。演出:金子文紀。第三話。

土佐清水を支配下に置くにあたり先ずはその街の顔とも云うべき四万十太郎(長瀬智也)を打倒しておくべく中村から来た「土佐の狂犬」ことクロワッサンの松(佐藤隆太)が、太郎の妹分(或いは恋人?)の岸田鈴(相武紗季)に一目惚れをして攻撃性を喪失するだろうことは容易に想像できたが、まさか太郎の一撃だけで直ぐ倒れ込み、涙ぐみ、反撃もできないままに泣き始める程に弱い男だったとはとても想像できなかった。凄まじい展開だった。

このドラマは所々微妙にしか笑えない中途半端な喜劇のようでありながら全体として妙に暗くて寂しい雰囲気があって、むしろ悲劇にでもなるのか?と思わせておきながら、今回のように最後に予想外の凄まじい喜劇が待ち構えていることもある。視聴者には柔軟性と忍耐力が求められるだろう。

ところで。

テレビ朝日系「タモリ倶楽部」は今宵「業務用炭酸水」特集。出演者はカンニング竹山隆範とマギーと六角精児と田中要次。酒を味わうのではなく酒を割るための炭酸水を味わうため、安い酒を用いて様々な炭酸水の美味を賞玩した。出演者たちが次第に酔ってゆく過程を見る番組だったとも云える。

2007年10月25日(木)曇一時雨

TBS系。「ジョシデカ!-女子刑事-」。

脚本:秦建日子。主題歌:AquaTimez「小さな掌」。プロデュース:鈴木早苗&武藤淳。演出:平野俊一。第二話。

畑山来実(仲間由紀恵)は白い服を着て、長い黒髪を翻し、舞うように走りながら尾行をしていた。しかも時には(標的の男がヴィデオ店で見詰めていた大人向けヴィデオの過激な題名に衝撃を受けた挙句)桜華子(泉ピン子)相手に楽しそうに話しかけたりしながら。こんな尾行が上手くゆくわけがないとは誰もが思うはずで、実際その尾行されていた男も最初から畑山を目障りに感じていたらしいが、驚いたことに桜華子は何一つ疑問を感じていなかった模様。劇中では、変な新人の畑山に呆れる常識人の桜…という構図が強調されているが、実は桜こそが変人なのだろう。

2007年10月24日(水)曇

日本テレビ系。水曜ドラマ「働きマン」。

原作:安野モヨコ。脚本:吉田智子。主題歌:UVERworld「浮世CROSSING」。演出:佐久間紀佳。第三話。

このドラマの原作を読んだことはないが、このドラマ自体をここまで見て現時点で感じ得たこと。それは、主人公の松方弘子(菅野美穂)を通して作中に描かれつつあるのが、世に理想化されてきた「働く女」の像ではなく、むしろ世に「働く女」の障害物として想定され攻撃されがちだった「男社会」の側の正義ではないのか?ということだ。先週ここに書いたように、第二話において「男社会」の正義を体現していたのは、周囲の男女から「女を武器にしている」と陰口を叩かれながらも実は「男社会」に上手く溶け込みながら男以上の努力を続けてきた野川由実(釈由美子)でこそあれ、断じて「働きマン」と称される松方弘子の側ではなかった。これに対し今週の第三話においては一転、ケチな現実と妥協して地味に働き続ける松方弘子が「男」の論理を体現していて、そうした安い妥協を潔しとしない若い田中邦夫(速水もこみち)がそれに対置されていたと云える。そして彼等の上司であるデスク=成田君男(沢村一樹)や編集長=梅宮龍彦(伊武雅刀)に代わって松方弘子が田中邦夫に与えた激しい叱責は、現今の奇妙に不平等な「平等主義」の不条理に対するフィクションならではの反発に他ならない。

ところで。

昨夜放送フジテレビ系「百識」昆虫篇の前編。昆虫採集に出かけた鮎川太陽が、山中で休憩して昼食中、オニギリを持つ手の小指が伸びていた。彼は基本的に所謂「小指を立てる」のだろうか。

2007年10月23日(火)曇

今週から火曜日の夜十時には日本テレビ系「有閑倶楽部」を見ながら同時に裏番組のフジテレビ系「スワンの馬鹿」を録画してあとで見るようにしようと思っていたのに、今宵は余りにも疲れが非道くて、日本テレビ系「踊るさんま御殿」を見たあと何時しか寝てしまい、起きたのは十二時半。「有閑倶楽部」を見逃したのみか「スワンの馬鹿」も録画し忘れていた。残念。仕方ないのでフジテレビ系「百識」昆虫篇の前編を見た。次週からは気を付けよう。

日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!」には篠山輝信が出ていた。昨年の夏、フジテレビ火曜九時ドラマ「ダンドリ。」では増田貴久の演じる「鈴木カルロス三郎太」の大親友の役を演じていた俳優。篠山紀信と南沙織の次男。あのドラマで彼はカルロス三郎太の情熱的な情の深さを(恋人以上に!)どこまでも深く愛する忠実な友を、地味で堅実で、しかし男子同士の友愛には徹底して熱く篤い男子として表現していた(皆に「カルロス!」と呼ばれていた鈴木カルロス三郎太を、彼のみは「三郎太!」と呼んでいたのも何だか熱い)。改めて見ると文字通り「目元の涼しい」美形男子だった。

2007年10月22日(月)晴

今朝、日本テレビ系「ズームイン!!SUPER」で青木堅治を久々に見た。「はなだまさるし」こと花田勝と離婚した直後の栗尾美恵子が三年前に十一歳下の俳優と不倫関係にあったことを暴露されたそうで、その相手というのが青木堅治だったのだ。しかも暴露したのは彼自身。この報道で傷付くのは、誰がどう見ても栗尾側ではなく彼の側だろう。売名行為と見られざるを得ないからだ。おまけに、交際していた女性に借金をして困っていたのを栗尾に肩代わりしてもらい、体の関係も含めた半年間の交際のあと別れた際には返済を迫られ脅迫されたとか、ファンを悲しませるような話題が付随している始末。かつて「池袋ウエストゲートパーク」や「反乱のボヤージュ」に出演していた美男子がこんな無価値なことで話題になるとは悲しい。

青木堅治は以前フォスターという芸能事務所に属していた。瀬戸朝香や鈴木杏、山口香緒里、勝地涼、北条隆博、北乃きい等の属する事務所だが、今その公式サイトに青木堅治は見えない。何時フォスターからいなくなったのか知らないが、TBS系ドラマ「こちら本池上署」で彼を見たのは二〇〇三年四月十四日のこと。以来テレヴィで彼を見た記憶がない。推測するに、テレヴィドラマや映画やCMのオーディションに落選し続け、仕事を獲得できなかったのだろうか。有力な所属事務所フォスターから去ったのは、自ら辞したのか、それとも解雇されたのか。月刊誌「メンズノンノ」モデル出身の俳優としてそれなりに注目されたこともあったはずなのに。

ともあれ、本件で最も凄いのは、青木堅治と花田勝氏との間に(少なくとも容姿に関しては)共通点が見当たらないという点ではないだろうか。若花田家メンバーは憲子を含めて実に出鱈目だ。

ところで。

フジテレビ系。月九ドラマ「ガリレオ」。

原作:東野圭吾「探偵ガリレオ」「予知夢」。脚本:福田靖。音楽:福山雅治&菅野祐悟。主題歌:KOH+「KISSして」。演出:西谷弘。第二話。

途中からは面白いと思ったが、唯一その面白さを損なったのは冒頭の面白くなさ加減。何が面白くなかったかと云えば、内海薫(柴咲コウ)の強烈な関心の描写に説得力が乏しかったからに他ならない。「幽体離脱」をして赤い車を目撃して絵にしたと云う十歳の少年、上村忠弘(今井悠貴)の証言の一体どこに強い関心を抱かなければならなかったのか。冷淡に考えるなら、容疑者のアリバイを裏付けるのが赤い車であるということを知ったあとに、あたかもそれを神秘の力によって目撃し得たかのようにその絵を描いたという可能性も充分に想定できたはずなのだ。そんなものに証拠能力なんかあるはずもない。もちろん結果としては、少年の云う「幽体離脱」の真相を物理学者の湯川学(福山雅治)が明晰に解明することによって、殺人事件の発生した日の特定の時間にのみ特別に生じ得た特殊な現象の実在性を突き止め、どんな目撃証言よりも強力なアリバイを実証し得たわけではあるが、少なくとも内海薫が少年の絵に初めて接した時点では、そのような展開は予想もできなかったに相違ない。内海薫が少年の「幽体離脱」証言に重要性を見出したのは何故か。結局「刑事の勘」に尽きる。容疑者の栗田(石井正則)が犯人ではないという勘と、少年は嘘を吐くような子ではないという勘。ともあれ上村少年の父(小市慢太郎)の嘘を見破る場面に焼肉店の女将の幸恵(虻川美穂子)を何故か同席させた理由が、少年の父親への愛と、そんな父子への女将の愛を見抜いてのことだったあたりが、なかなかよかった。

2007年10月21日(日)晴

NHK大河ドラマ「風林火山」。演出:田中健二。第四十二回「軍師と軍神」。

甲斐の軍師、山本勘助(内野聖陽)と、越後の「軍神」長尾景虎(Gacktガクト)が高野山で遭遇。勘助は崇拝する諏訪の由布姫(柴本幸)を亡くした悲しみから、喪に服する意で高野山の清胤(佐藤慶)を訪ね、他方、景虎は家臣団の間の利害の調整という己の役割を面倒くさく思い、ついには家臣と喧嘩して気分を害し、公務を放棄して出奔し、高野山で修行生活に入ることに決めて、同じく清胤を訪ねたところだった。行為としては同じことでも動機には大きな差がある。さらに山中で読経をしていた景虎に勘助が話しかけようとしたとき景虎は勘助の話を聞こうともせず問答無用で斬りかかり、勘助が何度も冷静に話しかけようとも、師の清胤に叱られて止められるまでは止めようとはしなかった。こうして見ると、聖人君子を気取る景虎が思いのほか未成熟な俗物で、勘助の方が大人であるように思えてくる。そのとき、勘助が景虎に対し、武田晴信(市川亀治郎)の徳は景虎には一生かかっても解し切れないだろうと告げたことの説得力が増してくるだろう。フィクションとしての歴史ドラマならではの実に大胆で面白い挿話だったと思う。翌朝、勘助と景虎の二人が仲よく並んで朝食を食っている姿の間抜けさ加減は最高に面白かった。

原虎胤(宍戸開)の娘、リツ(前田亜季)は予てから勘助に求愛、求婚してきて、晴信と由布姫もリツの願望を叶えたいと考え、姫に至っては遺言として勘助にリツとの結婚を命じていたが、高野山から戻った勘助はリツを養女として家に迎え、やがては立派な婿殿を迎えて山本家を継がせたいと提案。これに対する晴信の「そう来たか!」の言は、勘助が女と結婚することはなかろうと最初から見抜いていたことを物語る。かつての「源五郎」春日虎綱(田中幸太朗)のような、賢い美男子を婿殿に迎えたいのだろうか。ともあれ勘助は、高野山で清胤より授かった新たな摩利支天の御守を新たな山本家の家宝とし、娘リツにそれを預けた。摩利支天の妻=ミツ(貫地谷しほり)、摩利支天の姫=由布に続く三人目の女、摩利支天の娘に他ならない。四郎(池松壮亮)に従って去った志摩(大森暁美)も案外、摩利支天の侍女だったろうか。

ところで。

テレビ朝日系「仮面ライダー電王」。田ア竜太演出。第三十八回「電車の中の電車王」。

デンライナーオーナー(石丸謙二郎)と競技をしていた瓜二つのライヴァルである駅長(石丸謙二郎)は、競技中にも駅の機能を動員していて、カイ(石黒英雄)の陰謀によって暴走中だったゼロライナーとデンライナーの行方を捜索していた。単に遊んでいただけではないのだ。行方を探し当てたあと、駅そのものが巨大な最強の電車=「キングライナー」と化して走り、制御も効かず暴走していた二つの列車を駅の構内に強引に飲み込み、無事に停車させたところが最高に面白かった。

不気味なカイと強い獅子イマジン一家を相手に武器もなく対峙していた野上良太郎(佐藤健)と桜井侑斗(中村優一)の前にデンライナーが到着し、良太郎に対しコハナ(松元環季)が武器を、モモタロス(声:関俊彦)等が力を与えた瞬間もよかった。暴走を止めたデンライナーの食堂車内ではコハナやナオミ(秋山莉奈)やモモタロスやウラタロス(声:遊佐浩二)やキンタロス(声:てらそままさき)が復旧のため働いていたが、同じ頃、ゼロライナー車内ではデネブ(声:大塚芳忠)が忙しかったに相違ない。侑斗は手伝ったのだろうか。

ところで。

NHK衛星第二放送「ザ少年倶楽部プレミアム」には手越祐也が出演。テゴマスの歌二曲を歌う際には増田貴久も出演。NEWS結成の頃や現在の手越についてNEWSの他の五人が証言する映像の流された中では、増田は楽屋かどこかで私服と思しい格好で語っていた。赤というに近い濃厚なピンク色のタンクトップを着ていて、相変わらず肩や腕が太くて形が美しかった。

 

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