どうも苦手だった。「主人公の気持ちを次の中から選びなさい」といった国語の試験だ。考えれば考えるほど正解を選べない。中学生のころからか、自分は文学を理解できない人間なのだとあきらめてもきた。
しかし、昨年十二月、第一回美作市文学祭であった同市在住の作家あさのあつこさんと直木賞作家森絵都さんの対談を聞いて救われる思いがした。
会場の高校生から、作家は自分の作品が試験に出題されたとき、その答えをどう考えるのかというユニークな質問が出た。
あさのさんは「実際に解いたら、八割くらいしか解けなかった」と答え、森さんは「十人いれば十の答えがあっていいと思う」。二人の意外な答えに聴衆が沸いた。
試験は別にしても、文学をどう読み、何に感動し、人生にどう生かすかは読み手の自由。私の文学コンプレックスは一気に氷解したのである。
あさのさん自身、中学生の時に文学と出合い、物書きになりたいと思い、三十代で夢をかなえた。「自分の書いたもので人の運命を変えてみたい」と、今もふるさとで書き続けている。
二回目は十二月十三日、作東バレンタインプラザで開かれる。あさのさんが学生時代に師とあおぎ、デビューのきっかけをつくった児童文学作家の後藤竜二さんとあさのさんの対談が楽しみだ。
文学祭は、あさのさんと一緒に文化活動に取り組んできた地元の母親仲間たちに支えられている。末永く続いてほしい。問い合わせは美作市教委(0868−72−2900)。
(編集委員・清水玲子)