大阪証券取引所が、ジャスダック証券取引所を子会社化するため、株式公開買い付け(TOB)に着手した。大証は発行済み株式の三分の二以上の取得を目指しており、一方でジャスダック株の七割強を保有する日本証券業協会は発行済み株式の50・1%を売却することを決めている。他の証券会社も株売却に応じる見通しという。
大証は、ジャスダックを完全子会社化して早期に大証の新興市場ヘラクレスと市場統合する方針で、ブランド力のあるジャスダックの名称は残す方向とされる。統合が実現すれば、上場企業数約千百社の巨大な新興市場が誕生することになる。
大証の米田道生社長はTOBに当たり「一歩を踏み出した」と語った。買収が新興市場全体の再編の引き金になる可能性があり、市場活性化の契機となることが期待される。
新興市場の低迷は著しい。二〇〇六年、東証マザーズ上場のライブドアの粉飾決算事件をきっかけに、活況を呈していた新興市場の株価は急落した。最近の世界的な株安も追い打ちをかけ、現在ジャスダック指数はピークの約三分の一、マザーズやヘラクレスは約十分の一の水準にまでなっている。
ライブドア事件の後も証券取引法違反事件や有価証券報告書の虚偽記載など、上場企業の不祥事が後を絶たない。決算発表の延期、業績予想の度重なる変更といったこともある。新興市場に対する不信が尾を引いていることは、投資家離れの大きな要因といえよう。
一九九〇年代末以降、ジャスダックやヘラクレスのほかにも名証セントレックス、札証アンビシャスなど新興市場の開設が相次いだ。低迷する日本経済をベンチャー企業の育成で活性化しようという政府の考えもあった。誕生間もない企業にも門戸を開いた結果、上場審査が甘くなり、これが不祥事の要因と指摘された。だが、厳格化すれば新規上場を難しくするジレンマがある。現に、そうした状況は表れつつある。
多すぎる新興市場の整理が必要という声も根強いが、これについても証券取引所の主導権争いなど事情が複雑に絡み、再編が今後順調に進むかどうかは不透明といわざるを得ない。
それでも、新興市場が可能性を秘めた若い企業を育てるという重要な役目を担っていることは誕生時と変わりない。こうした市場が元気になれば景気後退が心配される日本経済全体にも好影響を与えよう。課題は多いが、関係者は活性化のために努力してもらいたい。
経営危機が深刻化しつつある米自動車大手三社(ビッグスリー)に対し、二百五十億ドル(約二兆四千億円)の公的資金を投入して救済する法案の採決が先送りされた。
三社首脳が資金投入を求め上下両院の公聴会で証言したものの、民主党指導部は議会と国民の納得を得られなかったとし、これが先送りの要因と述べた。公聴会出席に三社トップが専用ジェット機を使ったぜいたくさが批判を浴びた。
三社は十二月初めに議会に今後の経営計画を提示することになっている。妥当な内容であれば、あらためて公聴会を開催する予定という。
公的資金を投入しても再建できるかどうか、根底的な不信が議会や国民にあるようだ。大型車主体のビッグスリーはガソリン値上がりで販売が急減した。原油価格が下落に転じた後も、金融危機からきた消費低迷で販売不振が続いている。最大手ゼネラル・モーターズで十月の新車販売台数が前年同月比45・4%減というひどさである。
経営計画に経営陣の報酬カットや大胆なリストラが盛り込まれるか否かが注目点となる。中長期的な視点で考えれば、小型車へのシフトや燃費性能向上、さらには環境車への対応をどう早めるかといった経営戦略が必要なのではないか。
金融危機から発した暗雲は日本メーカーも覆っている。トヨタ自動車は二〇〇九年三月期の営業利益予想を一兆円引き下げた。倉敷市水島地区に工場がある三菱自動車を含め各社が減産に踏み込みつつある。
しかし、日本メーカーには、省エネや環境技術で秀でるという強みがある。ピンチをばねにする意気込みで技術を伸ばしてもらいたい。次の時代の飛躍を招き寄せられるはずだ。
(2008年11月24日掲載)