「来るか来ないか」ではなく「いつ来るかが問題」と言われるほど現実味を帯びてきた新型インフルエンザの大流行(パンデミック)に備え、県は各地域の中核となる8病院に対し、治療に必要な人工呼吸器や医療従事者用のマスクなどを購入するための補助を始める。今回の対象は病院数も額もごくわずかだが県は「今後も充実をさせたい」と意気込む。ただ、必要な配備数の目安はなく、病院側には戸惑いもある。【塩崎崇】
補助は1病院あたり、人工呼吸器1台の購入費のうち216万円と、医療従事者用の個人防護具セット(マスク、ゴーグル、ガウン、グローブ、キャップ、フェースシールド)330セットに相当する117万1500円が上限。国と県で折半する。
対象は、前橋赤十字▽渋川総合▽伊勢崎市民▽公立藤岡総合▽公立富岡総合▽原町赤十字▽館林厚生▽桐生厚生総合--の8病院。県がとりまとめて計画書を国に提出した。国の内示を受けてから各病院が購入する。
しかし、県は、この8病院が現在持っている人工呼吸器の台数は把握しておらず、パンデミック時に必要な台数についての目安もないという。
ある対象病院の感染症担当者は「今ある人工呼吸器は今いる患者のためのもの。パンデミック時には防護具が市場からなくなる恐れもある。どれだけ備蓄すればいいのか」と不安を口にし、「補助を受ければ『新型インフルエンザを診る病院』と住民からは見られる」と気を引き締める。
この8病院に国立高崎、国立沼田両病院を加えた10カ所は、県の第2種感染症指定医療機関。国の指針で、パンデミック時には定められた患者数を入院させることが求められる。県内10病院合計で46床で、すでに達成している。
一方、医療機器輸入・販売業者「ドレーゲル・メディカルジャパン」(東京都江東区)によると、同社の人工呼吸器「ザビーナ」の定価は550万~650万円。今回の補助は定価の3分の1程度に過ぎず、どのような設備をどこまで準備するか、病院側も頭を悩ませそうだ。
米疾病対策センター(CDC)のプログラムに基づく県の試算では、アジアかぜやホンコンかぜなど中程度のインフルエンザで人口の25%が発病し、流行が8週間続くと、県内の外来患者は約26万4000人、入院患者は約6700人、死者は約1700人にのぼるとされる。
毎日新聞 2008年11月24日 地方版