社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説:日米韓首脳会談 核、拉致で連携強化が必要だ

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれているペルーで行われた日本、米国、韓国の3首脳会談で、麻生太郎首相とブッシュ、李明博(イミョンバク)両大統領は北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の12月上旬開催を目指して調整を進めることで一致した。

 核問題に関する米朝合意にはあいまいな部分が少なくない。プルトニウム抽出量を追跡できるサンプル採取を北朝鮮は拒否しているが、米側は「合意されている」と反論している。食い違いが露呈するのは合意が口約束だったからだろう。

 米朝合意の甘さはほかにもある。たとえば、未申告施設への立ち入りには双方の同意が必要というのがそうだ。北朝鮮が最近、「検証対象は寧辺(ニョンビョン)の核施設のみ」とか「検証時期は他の5カ国による経済支援の終了後」などと勝手な主張をしているのも合意の甘さに起因する。

 核施設の無能力化や検証問題では米朝の2国間協議が先行し、両者の合意を他の参加国が追認するケースが多かった。6カ国協議が近く再開されるならば形だけでない厳格な検証体制を敷くことをすべての参加国が確認し、逃げ道をふさがなければならない。

 その意味で、今回の3首脳会談が核検証に関する合意を文書化する必要性で一致したことを評価したい。米国が政権交代期にさしかかり、北朝鮮は新政権の出方を探っていることだろう。だからこそ、日米韓が足並みをそろえることが一層重要になってくる。

 3首脳会談とは別に行われた日米首脳会談で、ブッシュ大統領は拉致問題について「デリケートな問題だと十分わかっている。オバマ新政権にもきちんと引き継ぐ」と述べた。

 拉致問題に関し日朝は8月の実務者協議で、北朝鮮が調査委員会を設置して生存者を発見し帰国させるための全面的な調査を行い、可能な限り秋までに結果をまとめることで合意している。しかし、秋も終わろうというのに北朝鮮からは何の連絡もない。

 日本にとって拉致問題を動かすためのカードだったテロ支援国家指定を米国が解除したことで日米間にしこりが残ったのは確かだろう。両国間には北朝鮮問題のほかにも、オバマ次期大統領が重視しているアフガニスタンでのテロとの戦いへの協力や、在日米軍再編に関係する普天間飛行場移設などの懸案がある。

 麻生首相とブッシュ大統領の会談は今回が最初で最後になる見通しだ。大統領の残り任期は2カ月を切り、麻生政権も足元が揺れている。だからこそ、ブッシュ政権下で生じたしこりを新政権下の日米関係に持ち越すことがないようにしなければならない。ブッシュ大統領自身が述べたように、日韓両国首脳との確認事項をオバマ氏にしっかり引き継いでもらいたい。

毎日新聞 2008年11月24日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報