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2008年11月24日

 かつて殺人事件の解明に不可欠だった「動機」が、これほどでたらめになった時代はないだろう

子どものころにペットを殺されたと思いこんだのが、仮に事実であったとしても、それが元厚生事務次官殺害計画に結びつくのは「動機」とはいえまい。出頭してきた男と元次官に何の接点があると言うのか。まして夫人の命を狙うのは理不尽、不条理としか言いようがない

「あの時から自分は不幸になり」「あの人のために自分の人生は狂った」と思い込めば、犯行の「動機」はどうにでもなる。これを心理学者は「妄想型の人格障害」の疑いがあると分析し、あるいは「後付けの動機」とも言う

殺す相手はだれでもいい無差別大量殺人に及んだ秋葉原通り魔事件と、特定人物に狙いを定めた今回の事件は、表面的には性格が異なるように見えるが、根底でつながるものがある。それが最近の重大犯罪の特徴になっているように思う

厚労省の関係者は犯人逮捕で不安は解消しただろう。が、日本社会全体から見ればこんな不可解な妄想型人間が年々増える現実を見せつけられて、不安は増すばかりだ。


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