「北方領土と尖閣諸島、日本の主張は矛盾」
- 宋基豪(ソン・ギホ)ソウル大国史学科教授は、「20世紀式の民族主義歴史学は今や、その役目を終えた。世界で10本の指に入る国家にふさわしい、新しい歴史学が必要だ」と語った。/慎亨浚(シン・ヒョンジュン)記者
「19世紀の中・後半以降に間島で朝鮮人移住民が急増するまで、朝鮮は、鴨緑江・豆満江以北の土地を“わが領土”とは考えていませんでした。一方、歴代中国でも、鴨緑江以南の土地が中国に属すると考えていた形跡はありません」
宋基豪(ソン・ギホ)ソウル大国史学科教授(52)のこうした言葉は、やや「挑発的」に聞こえるかもしれない。しかし、朝鮮王朝実録を軽く一読すれば、この主張に反駁(はんばく)するのは容易い事ではない、という事実を知ることになる。
宋教授が最近出版した『東アジアの歴史紛争』(ソナム)は、中国の東北工程、間島・独島などを巡って生じる韓国、中国、日本3国間の葛藤を通じ、東アジア3国の歴史認識について論じている。
彼は「韓中日3国が歴史や領土を見る観点は、あたかも“3つ子”のように似通っていることが多い」と語る。近代以後、「わが領土」で紡がれた歴史が「わが歴史」なのは言うまでもなく、過去に一時でも自分たちに属した地域の歴史なら、それもまた「わが歴史」だという論理に根ざしているからだ。
「日本が敗戦後、旧ソ連の手に渡った北海道北部の北方四島を自国の領土だと主張するのは、過去の歴史に根拠を置いていますね。一方、1895年の日清戦争後に清から割譲された尖閣列島(中国名:釣魚島)に対しても、日本は権利を主張しています。矛盾していますよ」
高句麗の民族魂を語って「故地回復」を声高に主張したり、古朝鮮と高句麗・渤海の歴史を中国史に属すると見る韓・中両国の態度も、日本の主張とさほど違いはない、というのが彼の指摘だ。
「学問は対象を客観化させる作業です。自分にとって不利な資料には目を向けずに、一般的な主張ばかりするならば、それは学問と言えるでしょうか。領土や歴史を巡る紛争で東アジア3国は、第3者が見ても同意できる一貫した基準を、1日も早く準備しなければなりません」
崔鍾沢(チェ・チョンテク)高麗大教授(高句麗考古学)は、「誰かがもっと前にしておくべきだった話だ。東北工程の初期に、こうした話が出て来なければならなかった。学界ですら、民族感情にひどく振り回されてばかりいる」と語った。またオ・サンハク済州大教授(地理学)も「間島問題などに対する宋教授の指摘は、一般人には受け入れ難いものかもしれないが、学界ではもう随分前から定説となっている」と語った。
宋教授は1975年度の予備考査(現在の修学能力試験=日本の大学入試センター試験にあたる)で首席を取った後、ソウル大学人文大国史学科に進学し、当時話題となった。渤海史を専門とする。
慎亨浚(シン・ヒョンジュン)記者
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