Print this Post Article Lists Back

刀を置き、花を手にしたサムライたち(2/6)

「21世紀ネオ・ジャパネスク」大解剖

◆食でなく文化を売る

 「NOBU TOKYO」の蒔田浩巳マネージャーは、客がいない閑散とした午後に取材に応じてくれた。海外進出の初期は生魚に対する抵抗感をなくすため軽く火を通したり、サラダにしたりと、いろいろ工夫してみたそうだ。だが、「今は欧米でも“すし”と“刺し身”は低カロリーの健康食として市民権を得ました」と話す。

 「NOBU」は日本人シェフの松久信幸氏(59)がハリウッドの名優ロバート・デ・ニーロとコラボして立ち上げたレストランのブランドだ。もともと二人はシェフと常連客という関係だった。松久氏がロサンゼルスで経営していたすし店にデ・ニーロが通い詰め、意気投合しレストラン・チェーンを作った。ミラノ支店には有名デザイナーのジョルジオ・アルマーニも参加し、話題を集めた。

 西洋社会において「NOBU」は高級なイメージを持っている。米ニューヨークのマンハッタン支店はセレブが集まる店として有名だ。レオナルド・ディカプリオ、グウィネス・パルトロウ、ブルース・ウィリス、アン・ハサウェイ、サラ・ジェシカ・パーカーといった人気俳優たちもよくやって来る。世界各地に27店舗を展開する「NOBU」のチェーン店は、どこもその国の上流層をターゲットにしている。

 いろいろな話の中でも、特に蒔田マネージャーの「はし文化論」は興味深かった。

 「海外店ではフォークとナイフも用意していますが、常連客はたいてい、はしを使います。米国社会では、はしで日本料理を楽しむのが上流層のシンボルのようになりました。米国のエリートたちは、はしの使い方が若い日本女性よりも上手ですよ」

 つまり、「NOBU」は料理そのものではなく、日本文化を売っているのだ。「NOBU」だけではない。「すしレストラン」は世界のどの国でも高級なレストランとして知られている。すしや刺し身のような日本食には、「ウェルビーイング」(健康と美容にいいライフスタイル)のイメージもある。

 「食」は文化の先兵だ。マクドナルドに象徴される米国の食文化が低価格で実用的というイメージを持つなら、日本の食文化はブランド価値のピラミッド構造で上層部を占めるというイメージがしっかりと定着している。醤油メーカー「キッコーマン」の2006年統計によると、世界に日本食レストランは2万4000店あり、毎年急増しているという。ブラジル・サンパウロにはシュラスコ(ブラジルのバーベキュー)の店よりも「すしレストラン」のほうが多いというデータもある。クモの巣のように張り巡らされた飲食店ネットワークを通じ、日本は文化やライフスタイル、そして国のイメージを売っている。

東京・京都=金正薫(キム・ジョンフン)経済部部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る