【ニューデリー栗田慎一】チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は23日、チベット亡命政府のあるインド北部ダラムサラで記者会見し、「私も73歳だ。政治的な役割から引退すべきだと感じている」と語り、“国家元首”の立場から身を引き、宗教指導者としての役割に専念したい考えを明らかにした。「高度な自治」を求めて中国と02年から続けてきた対話が事実上失敗したことを受け、責任を取る意向とみられる。すぐの引退はないとみられるが、発言はチベット人社会に大きな波紋を広げそうだ。
ダライ・ラマはこれまでも、チベット人たちとの会合で政治活動からの自発的な引退を漏らしているが、メディアに対して述べるのは初めて。さらに「私の後は、(チベット仏教ナンバー3で23歳の)カルマパ17世がいくつかの任務を引き継ぐだろう」と述べるなど、後継指名とも取れる発言をした。
ただ、22日に閉幕した亡命チベット人諸組織の代表者会議は、ダライ・ラマに政治的役割の継続を求めることで一致。亡命政府幹部も「すぐの引退はない」と否定した。
またダライ・ラマは「チベットのために死ぬまで働くのが道徳的責務だ」と述べ、宗教指導者としての役割に変わりはないことを強調。一方で「これからは若い世代がいい。次のダライ・ラマも古式と伝統に従って選ばれるだろうが、女子にも機会が与えられるべきだ」と語った。
焦点の中国との対話再開については「決断するまで1カ月待ってほしい」と言葉を濁した。
毎日新聞 2008年11月23日 20時05分(最終更新 11月23日 20時17分)