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【萬物相】韓国キムチの悲しい現状

 先週土曜日、京畿道盆唐に住む60代のある夫婦がキムチ作りに使う白菜を買うため農協系列のスーパーを訪れた。すると驚くことに、100メートル以上の長い列ができていた。塩に漬け込んだ白菜は売り切れてしまい、「生産地の全羅南道海南市から白菜が到着するまで4時間半かかる」と言われたのだが、それでも買い物客らは整理券を受け取って際限なく待っていたのだ。秋の行楽シーズンも終わった先週末、首都圏各地の道路ではあちこちで長い渋滞が見られた。江原道や忠清道などへ白菜や塩辛などを求めて出掛ける家族連れのためだ。ラジオの交通情報ではこれを「キムジャン(越冬用のキムチの漬け込み)渋滞」と呼んだ。

 マンションに住む複数の核家族が互いに協力し合うキムジャンがブームとなっている。マンションの掲示板に「一緒にキムチを作りましょう」というお知らせが張られると、たちまちあちこちから「参加したい」との連絡が入るという。白菜や塩辛、そのほかの薬味を共同で低価格で購入し、家族ごとに集まってキムチ作りに励みながら近所づきあいができるのだから、まさにいいことずくめといえるだろう。今年はこのようにしてキムチ作りを楽しむ家庭が例年になく増えたようだが、その大きな原因はメラミン騒動などで食に対する不安が高まっていることにもある。

 昨年はキムチではなく「禁(クム)チ」といわれるほど白菜の価格が高騰し、家庭でキムチを作るよりも出来上がったキムチをスーパーで買った方が安いくらいだった。ところが今年は天候に恵まれて白菜が豊作となり、価格も昨年の半分以下にまで落ち込んだ。キムジャンの季節はキムチメーカーにとっても1年で最も多く売れる勝負時だが、今年は主婦たちが節約に走ったことで逆に売り上げが減少し、業界は非常事態だという。それでもキムジャンブームを狙って策略をめぐらす悪徳商人たちは後を絶たないようだ。

 陰暦6月に水揚げされたエビを使った塩辛は、殻が薄く肉厚もたっぷりで甘く香ばしい味が出る。中国産のエビの塩辛が国産の塩辛に偽装される現場が先週、ニュースで放映された。業者は苦みのある中国産のエビを大量に持ち込んで塩水で洗った後、国産のような甘みが出るよう化学調味料をスコップのようなもので大量に混ぜていた。塩についても、中国産を国産の天日塩と混ぜて販売したり、また袋ごと韓国産に変えてしまうような行為も横行している。

 韓国産カタクチイワシの塩辛には化学調味料やカラメルを加えることもある。カタクチイワシの塩辛をキムチ作りに適したイカナゴの塩辛として販売する業者もあった。キムジャンの季節に塩辛の買い物ツアーをあっせんする旅行会社に対し、塩辛の販売店から売り上げの3割近くを支払うという慣例が、悪徳商行為をあおっているという。中国産キムチが国内にはんらんするようになり、2004年には中国からのキムチ輸入量が韓国産キムチの輸出量を上回った。品質の信頼性で日本産キムチに劣るとされ、キムチ宗主国の面目を失ったのも随分前のことだ。キムジャンの季節になって改めて直面する韓国キムチの現状はまさに悲惨なものだ。

キム・ドンソプ論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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