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パキスタン:米軍の越境攻撃に反発…「対テロ同盟」危機

 【ニューデリー栗田慎一】パキスタン政府は22日、アフガニスタン駐留米軍によるパキスタンへの越境ミサイル攻撃で、武装勢力を支持する国民が増え、内戦の危機が高まったとして、欧州連合(EU)やサウジアラビア、中国などに対し、米国の攻撃を停止させるよう働きかけを求めると明らかにした。越境攻撃強化の立場を取るオバマ次期米大統領に強く反発、米国への国際的圧力を強める試みで、米パの「対テロ」同盟関係は重大な危機に直面した。

 政府軍のキヤニ陸軍参謀長も19日、北大西洋条約機構(NATO)本部で越境攻撃阻止への協力を要請した。

 米軍無人機によるとみられるミサイルは22日も部族支配地域北ワジリスタンに着弾し、報道では、国際テロ組織アルカイダ構成員ら5人が死亡した。

 しかし、この日の攻撃は、部族地域で唯一「政府支援」の立場を取る武装組織が「22日以降も越境攻撃が続けば政府支援を打ち切り、対米闘争を開始する」との声明を出した直後。同組織との断絶は、政府が部族地域の武装勢力との対話窓口を完全に失うことを意味する。

 パキスタン政府は、今回の交渉を始める理由について「米国が度重なるパキスタンの抗議を無視している」ためと強調。さらに「越境攻撃はテロを根絶するという目的に逆行し、武装勢力への支持拡大につながっている」と断じ、「改めて領内への攻撃を侵略行為とみなす」と警告した。

 米国がミサイル攻撃を続ける背景には、武装勢力タリバンが勢力を盛り返した背景に、パキスタン側武装勢力の支援があるためとの思いがある。

 ムシャラフ前大統領は01年、部族地域での軍事作戦を始めるに当たり、米側に「掃討作戦の主権」を求め、米軍の領内進入を禁じた。このためブッシュ政権はムシャラフ政権に掃討強化の圧力をかけ続けたが、ムシャラフ氏が8月に辞任すると、無人機によるミサイル攻撃を急増させ、9月には初の地上部隊を越境させた。

 米国のこうした軍事的圧力に対し、ザルダリ政権は9月に部族地域での戦闘を強化させ、武装勢力に反発する部族に武器を渡して対立させるなど、追従姿勢を見せた。

 しかし、政府への反感と武装勢力への支援が国内に広がり、軍は「武力だけでは勝てない」と国会議員に対話の重要性を極秘説明。議会は10月、政府に「対テロ戦の転換」を求める議案を満場一致で可決していた。

 ◇パキスタンへの米軍越境ミサイル攻撃

 米空軍の無人偵察機・プレデターにミサイルを搭載、04年4月から部族支配地域で続けられてきた。攻撃数はムシャラフ前大統領が失脚した今年2月の総選挙まで約20件。3月の新政府発足後、総計60件近くに増えた。今月4日の米大統領選後も続き、19日には部族地域外に初めて着弾、範囲を拡大している。

毎日新聞 2008年11月22日 20時16分(最終更新 11月22日 20時52分)

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