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社説:銀行業績悪化 悪夢の再来を全力で防げ

 過去のものになっていたはずの「不良債権」や「貸し渋り」の悪夢がよみがえろうとしている。

 このほど出そろった銀行の9月中間決算は、業績の急速な悪化を印象付けた。大手銀6グループ合計の最終利益は前年同期比で約6割も減り、4年前の低水準だ。欧米の金融機関が経営難にあえぐ中、その救済や買収に乗り出す“攻め”の姿勢さえ見せていた大手銀だったが一転、火の粉を振り払わねばならない立場になった。

 もちろん、状況はバブル崩壊後に経験した金融危機ほど切羽詰まったものではない。しかし、油断は禁物である。経済活動の血液であるマネーを必要なところに送り続ける金融の役割に支障をきたすことが再びあってはならない。銀行には、早めの自己資本増強などにより、予想される景気の一段の悪化に備え万全を期してもらいたい。

 大手銀の業績が大幅に悪化した背景には、国内でも景気が急速に冷え込んできたことがある。企業倒産が増え、銀行は将来の貸し倒れに備えた引き当てなど不良債権処理を急がねばならなくなった。

 世界的な金融危機の中で国内の株式相場が急落したことも打撃を与えた。邦銀は取引先企業との緊密な関係を象徴する「株式の持ち合い」などを通じて株を大量に保有している。その価値が相場の下落により目減りし減損処理を迫られた。

 保有株は、時価と簿価の差額にあたる含み益の一部が銀行の自己資本に組み入れられ、経営基盤を補強する役目も果たしてきた。ところが、株安になると自己資本まで目減りする。バブル崩壊後の苦い経験がある邦銀は、保有株の売却を進めたものの、十分ではなかった。そのツケが回ってきた形だ。

 大手行の自己資本は、まだ危険水域にはない。だが、景気後退の長期化や金融の一段の混乱も懸念されるだけに、早めに手を打っておく必要がある。追い詰められてからの資本調達がいかに大変かは学習済みのはずだ。自己資本が手薄になれば貸し出しを抑制せざるを得なくなり、銀行本来の役目が果たせない。バブル後の混乱の再来は何としても回避してもらいたい。

 地方銀行の経営は大手行以上に深刻である。上場地銀87行のうち約3割が中間期は赤字決算となった。景気の悪化により建設・不動産業を中心とした地方企業の倒産が増えており、貸し出しが不良債権化しているのだ。

 地域経済を支えてきた金融機関が、資本不足により貸し渋りの姿勢を強めたり破綻(はたん)するようなことになれば、景気を一層冷え込ませる。そうならないようにするため、地域経済に必要な金融機関への資本注入を可能にする金融機能強化法改正案の成立など、公的な支援体制も整えておかねばならない。

毎日新聞 2008年11月23日 東京朝刊

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