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2008年11月23日

◎迷走する麻生政権 民間を頑張らせる政策を

 “迷走”が目立つ麻生太郎首相だが、今度は日本郵政グループ各社の株式売却を凍結し 、郵政民営化計画を見直す考えを表明した。改革に後ろ向きの姿勢がここまできたか、の思いを抑えがたい。民営化をやめるのではなく、安いときに株を売らないということだと言ったが、経営のあり方を決めるのは郵政経営陣の責任であり、民営化の枠組みを変えるには法律改正が要る。首相の指示で運用方針を変えることなどできない。

 小泉改革にも欠陥があり、その是正を否定するものではないが、上場会社を目指して努 力しているときに言うべきことか。次期総選挙で自民党離れをした全国郵便局長会などの支援を得たいとの思惑が見え、完全民営化への計画が後退する懸念を持たざるを得ない。小泉改革への反動から、日本医師会等でも民主党支持へ走った支部が出ている。首相のあせる気持ちも分からないではないが、世界同時不況の兆しが見える今、何よりも民間が元気になる政策打ち出しに的を絞るべきでないか。

 先日の全国知事会で、地域や診療科によって医師不足が深刻な現状を訴え、対策を求め る知事らに首相は医師の資質が原因のように受け取れる見解を述べ、陳謝、撤回した。資質に問題のある人がいるのは医師の世界に限らないし、医師不足に苦慮する知事らへの答えになっていない。

 追加経済対策の定額給付金をめぐっても財政規律派の与謝野馨経済財政相らの横やりで 二転三転し、判断を地方に丸投げした。いつ給付なのかも明確でなく、アナウンス効果がすり減ってしまった。何でもない漢字の読み間違いもある。内閣支持率が上がるわけがない。

 一九三〇年代の大恐慌のとき、財政規律派のフーバー大統領が事態を悪化させ、代わっ て登場したルーズベルト大統領はニューディール政策で知られるが、ビールは飲んでいいよ、と禁酒法に風穴を開けて社会の空気を明るくした。民間にも頑張る人が出て、例えばロックフェラー氏は失業者に仕事を与えるためロックフェラー・センターを建て豪華なものになった。見習ってほしいことだ。

◎ホテルで加賀野菜 食ともてなしをセットで

 金沢市の提案を受け、市内の都市型ホテルの朝食バイキングに加賀野菜を使った料理の コーナーが登場した。加賀野菜の発信や販路拡大のためばかりではなく、遠来客に対するもてなしの質を磨くという観点でも、この地域の特色ある食文化や食材に気軽に触れられるスポットを増やすことは大切である。積極的な働き掛けにより、輪をさらに広げてもらいたい。

 旅行やビジネスで遠方に出掛けた際には、目で見て楽しむ名所旧跡ばかりでなく、その 土地ならではの食文化ものぞいてみたいと思うのが人情だ。そうしたニーズに可能な限り応えるのも、もてなしの基本だろう。

 市などは、首都圏や関西圏で加賀野菜をPRするためにさまざまな事業を展開している 。これが効果を上げれば上げるほど、観光客らの「金沢を訪れたからには加賀野菜を食べたい」という声も大きくなることが予想される。にもかかわらず、市によると、加賀野菜を使った料理を提供しているところは、まだ決して多いとは言えない状況という。

 都市型ホテルの朝食で加賀野菜が広く取り入れられれば、忙しいビジネス客らも気軽に 味わうことができ、うれしい心遣いとして印象に残るだろう。もちろん、都市型ホテルだけにこだわる必要はなく、湯涌温泉の旅館や一般の飲食店などにも加賀野菜をもっと料理に取り入れるよう協力を求めていきたい。

 併せて、旬の加賀野菜を味わえる場に関する情報を分かりやすく提供する工夫も必要だ ろう。このところ、B級グルメを核にした地域おこしに力を入れるまちが全国的に増えているが、そこには当たり前のように、食べ歩きの際に便利な地図やパンフレットが用意されている。

 市は、金沢ブランド農産物加工・流通推進会議の提言を受け、加賀野菜を使った料理を 出す飲食店、加賀野菜そのものや加工品を販売する小売店などを対象とした「登録店制度」の導入を検討している。早急に実行に移してもらいたいアイデアである。


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