2002年8月25日(日)

アニメのキャラに命を吹き込む

声優さんのアフレコ作業

表情豊かに熱演

アフレコについて、監督の阿部記之さん(左端)と、声優の中島沙樹さん(左から2人目)に話を聞くこども記者たち=東京都新宿区の録音スタジオで

 アニメってどうやって声を入れるの?声優さんの仕事ってどんな感じ?こども記者は、テレビ愛知製作の人気アニメ「東京ミュウミュウ」の録音スタジオを訪れ、アフレコ作業(音入れ)の様子を取材しました。

 東京都新宿区内の大勢の人が行き交う場所の地下にスタジオはありました。音を立てないよう、静かに階段を下りていくと…。「地球の未来にご奉仕するにゃん!」。早速、中島沙樹さん演じる主役桃宮いちごの決めぜりふが聞こえてきました。

 「東京ミュウミュウ」は、イリオモテヤマネコなど絶滅の危機にひんする動物のDNA(遺伝子)を組み込まれた、五人の女の子が主人公。危険を感じたら変身し、地球を守るためにエイリアンと戦う物語です。

 この日、分厚い防音ドアに仕切られた、ほの暗いスタジオでは、約一カ月後に放送予定の話を収録中。十五人ほどの声優さんが、音の入っていないアニメの口の動きに合わせてしゃべったり、笑ったり、泣いたり…。台本と画面の両方に目を向けながら、演技していました。

おなかをたたいてアッ

ウッ痛い時の声研究

 マイクは三本なので、自分の出番になると前へ出てせりふをしゃべり、終わると後ろへ。狭いスタジオの中を、一人一人が動き回ります。機械を操作しながら、ガラス越しに演技を見守る監督の阿部記之さんの表情も真剣。「そこはきつい調子で」「もっと気持ちを込めて」と厳しい指示を飛ばします。声優さんも自分からとり直しを頼むなど、「作品を面白くしよう」という熱気が漂っていました。

 収録は週一回。リハーサルを繰り返し、約五時間をかけて一話を完成させます。声優さんには収録の一週間前に台本を渡して読み込んできてもらいますが、「当日になってせりふを変えたり、増やしたりするのはよくあること」と阿部さん。

 驚いたのはエイリアンとの戦闘シーン。実際に殴られたわけではないのに、「ウッ」とか「アッ」とか、声だけで本当に苦しそうです。「自分で自分のおなかをたたいたり、床に倒れたり。痛い時にはどんな声が出るのか研究してる」と中島さん。走るシーンでは、実際に走ってみた時の息遣いを思い出し、再現しているそうです。

 桃宮いちごは中学生の設定です。中島さんの年齢とは十歳ほどの差があるため、「高くてかわいい声を出せるよう、今もボイストレーニングに通ってるの」。収録が終わっても自分の声に戻らず、「高い声でキャアキャアしゃべり続けてしまうこともある。それぐらい集中してるんだよ」と話してくれました。

 「はい、お疲れさま」。午後三時近く、阿部さんが作業終了を知らせると、スタジオ内には、ホッとした笑い声がはじけました。「一話を作るには、たくさんの時間がかかるし、大勢の人がかかわっている」と話す阿部さんと中島さん。記者は、一本の作品を完成させることの大変さを実感しました。

 瀬古 美里(名古屋市天白小6年) 30分間のアニメの音入れに、約5時間もかけると聞いてびっくり。アニメの登場人物になりきる声優さんの仕事は夢があります。
 黒江 美咲(愛知県安城市今池小6年) プロになってからも、より高い声や低い声を出そうと、ボイストレーニングに通っているそうです。真剣な姿に感心しました。
 後藤 優花(名古屋市千代田橋小5年) 放送されるのは声だけなのに、みんな表情がすごく豊かでした。日ごろからのどの調子に気を付けるなど、大変な仕事です。
 有馬 朋子(三重県鈴鹿市栄小5年) 原作のイメージとは声の感じが少し違う気がしていましたが、やっぱり上手でした。決めぜりふを生で聞いてウキウキしました。
 大岡 由乃(名古屋市瑞鳳小4年) 中島さんの台本には、赤いペンで線がたくさん引いてありました。主役は、ほかの人に比べてせりふが多いので大変だと思いました。