現在位置:
  1. asahi.com
  2. 見えなかった世界の現状。今、私たちにできること。
国境なき医師団

見えなかった世界の現状。今、私たちにできること。

世界の現状レポート

世界の現状レポート
3つの現実が語る。今、世界で起こっていること。

 世界に名だたる先進国日本。私たち日本人はその繁栄と平和の下、何不自由なく暮らしている。とはいえ、日常の生活では目先の仕事や日々のスケジュールに追われ、他国の状況にはほとんど目を配れていないのが現実。なんとなく世界の惨状を耳にすることはあっても、すぐに忘れてしまったり、まずは自分の生活が最優先となってしまったり……。

 私たちのこうした姿勢は、日々接している新聞やテレビなどのメディアのあり方を反映しているとも言える。実際、マスメディアで報道されるニュースは世界で起きている事実のほんの一部にしか過ぎず、紛争や災害、貧困や感染症などによって日々多くの命が失われている事実がニュースの洪水の中で埋もれてしまっているのだ。

 しかし、私たちは「きっかけ」さえうまくつかめれば、行動することができる。一人ひとりが動けば、間違いなく世界の惨状は改善の方向に向かっていくだろう。

 まずは、このレポートから「行動する」きっかけをつかんでいただきたい。

栄養失調で年間500万人が命を落とす現実

 現在、世界では2000万人の子どもたちが重度の急性栄養失調に陥り、年間500万人が命を落としている。先進国に暮らす我々から考えると信じがたい数字だが、それが現実なのだ。例えば、ニジェールでは4人に1人の子どもたちが5歳の誕生日を迎えることなく死んでいくという。その大きな要因の一つが栄養失調。栄養失調によって免疫力が低下し、命を落とす危険性のある合併症を起こしやすくなるのだ。

 栄養失調の治療には、通常の食糧配給ではなく、適切な栄養補給と治療が必要だ。だが、現在一般的に行われているプログラムではそれが十分に行われていないのが現状だ。こうした課題を踏まえ、「国境なき医師団」では、栄養治療食「RUF(ready-to-use food)」を先駆的に導入。このRUFの画期的な点は、調合や調理を必要とせずそのまま食べるだけで発育に必要な栄養素と500kcalを簡単に摂取できる点だ。常温で長期保存も可能、自宅での摂取治療ができるので確実な継続治療にもつながる。効果も絶大だ。ニジュールで行った試験的なプログラムでは、命にかかわる重度の栄養失調であってもRUFを用いた栄養治療食を処方することで驚くべき早さでの回復が可能であることも実証された。

 「国境なき医師団」では、この効果的な治療法の拡大を各国政府、国連機関、他NGOに求めるとともに、患者がどこに住んでいても適切な栄養治療が受けられる態勢作りに取り組んでいる。

 失わずにすむ命は確実に守る。「国境なき医師団」の挑戦はこれからも続く。

薬が手に入らないという現実

 目覚ましい医学の進歩の恩恵を受けることができる先進国では、多種多様な病気のそれぞれに数多くの薬が用意されている。しかし、世界で貧しく弱い立場にある多くの人々は命を救い、余命を延ばすための薬すら手に入れられずにいる。

 毎年、感染症によって多くの命が奪われており、そのほとんどが発展途上国の人である。感染症の多くは適切な薬さえあれば治療することができるにもかかわらず、世界にはそれを手に入れることができないでいる人が数多くいる。

 薬が手に入らない理由も様々だ。命を救う医薬品の多くは、必要とするほとんどの人には手が出ないほど高価で販売されているだけでなく、収益性がないために市場から姿を消してしまった薬もある。そして、治療薬が全く存在しない病気もあるのだ。

 こうした現状を少しでも変えていこうと、1999年から「国境なき医師団」は薬を最も必要とする人々の手に届くものにするための「必須医薬品キャンペーン」を開始。既存薬の価格低下や時代遅れな治療方針の変更に取り組む一方、結核、アフリカ睡眠病、マラリアなどの顧みられない病気に対する新しい医薬品の開発研究促進のための取り組みを次々と進め、大きな成果を得ている。その原動力は、常に「命を救う薬が手に入らない」という状況に直面した現場のスタッフたちの声だ。

 課題はまだ山積している。「国境なき医師団」はこれからも、既存の治療法をより利用しやすくすること、そして貧しい国の人々のニーズを考慮した医療ツールの開発促進に継続して取り組んでいく。

メディアが報じない人道的危機の現実

 世界には自国からも国際社会からも置き去りにされ、生きるための最低限の援助さえも受けられない人たちがいる。そして、その多くはメディアからも忘れ去られている。

 「国境なき医師団」は、メディアの関心の外側にあるこうした人々の窮状を継続的に訴えていくことを目的に、1998年から毎年、その深刻さにもかかわらず世界で報道されることの少なかった人道的危機のワースト10のリストを発表している。

 例えば、2007年「10の最も報じられなかった人道的危機」には、ジンバブエでは成人の5人に1人がHIVに感染し毎週3000人が死亡していることや、避難先から故郷に戻っても住める環境もなく身体も心も傷ついているチェチェンの人々の現状のほか、コロンビアやコンゴ、スリランカ、ソマリア、中央アジア、ミャンマーにおける惨状や世界各国における結核や子どもの栄養失調の問題が報告されている。驚くべきことに、ここで報告された内容がアメリカ3大テレビネットワークの毎晩のニュース番組で取り上げられた時間は、2007年1月から11月までを合計してもわずか18分間。なかでもチェチェン、スリランカ、中央アフリカ共和国についての報道は皆無だったという。

 一人でも多くの人々がニュースでは報じられない「現実」を知り、支援のための行動を起こしていくことこそが、人道的危機にさられた人々を救い出すことにつながる。「国境なき医師団」は、そう確信している。

私たちとともに命を救う力となってください。

ニュースの洪水の中に埋もれる「世界の現実」

栄養失調でやせ細った子どもたちの二の腕を計測するために「命のうでわ」を活用

国境なき医師団では「必須医薬品キャンペーン」を展開

ジンバブエでは成人の5人に1人がHIVに感染

MSF JAPAN

オフィシャルサイト別ウィンドウが開きます

国境なき医師団のオフィシャルサイトでは、毎日現地から発信される活動ニュースを 中心に、様々な支援情報を公開しています。

支援をする別ウィンドウが開きます

国境なき医師団の活動は、民間のみなさまからのご寄付によって支えられています。 ご希望にあった方法でご支援ください。

活動に参加する別ウィンドウが開きます

国境なき医師団の医療援助活動は、さまざまな国から集まる海外派遣スタッフがチー ムを作り、さまざまなプログラムを運営。