瀬戸内海を挟んで向かい合う岡山県と香川県。今年開通二十年を迎えた瀬戸大橋によって、両県の関係は一層緊密になっています。大橋の通行料金値下げ問題など政治的な連携もありますが、文化面でも大きな動きがあります。
岡山県立博物館と香川県立ミュージアムが、二〇〇六年度から三年計画で取り組む文化交流事業も一例でしょう。その一環の「備讃における工芸のあゆみ」展が、同ミュージアムに続き、同博物館で十二月十四日まで開かれています。岡山の備前焼、香川の漆芸と代表的な伝統工芸を中心に並べ、岡山県民にとっては、「讃岐漆芸」の精髄に触れられるまたとない機会です。
この事業ではこれまでにも、岡山から備前焼を、香川から高松松平家ゆかりの品を交換展示、多くの美術ファンらの人気を集めました。さらに学芸員やボランティアらの人的交流も活発に。この蓄積が今後どう生かされるか楽しみです。
瀬戸内と文化といえば、香川県と直島福武美術館財団などが二〇一〇年開催を目指す「瀬戸内国際芸術祭」の基本計画も、このほど明らかになりました。香川、岡山の直島、豊島、犬島など八会場で、七月十九日から十月末まで開かれます。
主に現代アートが展示されそうですが、その舞台となる島々は、過疎高齢化などそれぞれに悩みを抱えています。こうした機会を通し、岡山、香川地域の間に広がる備讃瀬戸の風景や自然、歴史、文化に光が当てられることを期待したいものです。
(文化家庭部・金居幹雄)