エロ小説家のお説教 ニュース記事に関連したブログ

2008/11/19 20:05

 

今日発売の週刊新潮11月27日号で、「失楽園」などで知られる作家の渡辺淳一が田母神論文についてものすごいコラムを書いていた。あまりにケッサクだったので紹介したい。

本来なら私が問題の箇所を抜粋して紹介するところだが、恣意的に抜粋してコラムに込められた意味が損なわれるとアレなので、全文引用することにする。
 

あとの祭り 渡辺淳一
なぜ田母神論文が生まれたか

このところ、田母神前空幕長の話題が新聞やテレビで大きく取り上げられている。
この男が発表した論文。たしかに狂って的外れだが、それを取り上げるマスコミの意見も、同様に少し的を外れているように思うのだが。

知らないだけ

日本は朝鮮半島や中国大陸に相手国の了承を得ないで、一方的に軍を進めたことはない。我が国は蒋介石により、日中戦争に引きずり込まれた。日本が侵略国家だというなら、当時の列強で侵略国家でなかったのはどこかと問いたい。アジアの多くの国が大東亜戦争を肯定的に評価しているのに、日本が侵略国家だというのは濡れ衣である。
以上が田母神論文の要旨だが、これが誤りであることは明白である。
事実、一九九五年に発表された村山談話で、昭和期の戦争について、日本が国策を誤ったこと、植民地支配と侵略により、アジア諸国の人々に損害と苦痛を与えたことを明確に認めている。
だが田母神氏は、これは誤りだという。日本はアジア諸国、朝鮮も中国も侵したことはなく、侵略は濡れ衣だという。
なぜ空幕長の要職にいた男が、こんな馬鹿げたことをいうのか。
理由は簡単である。日本の過去の事実をほとんど知らされず、体験もしていないからである。

非道の数々

日本が戦争に敗れたとき、わたしは小学六年生であった。
当時、わたしは札幌に住んでいたが、その前、小学校低学年のときは北海道でもっとも大きな炭坑があった砂川に住んでいた。
ここで、私は信じられない、恐ろしい状景を目撃した。
まず砂川の市街を外れた丘の下、山峡を流れる川のほとりに炭鉱労働者の飯場があった。たまたま親戚がその丘の上で新聞販売店をやっていたので、ときどき遊びに行ったが、「下の川べりに行ってはいけない」と厳しくいわれた。
そこには、朝鮮人の飯場があって、腹をへらした労働者が「アイゴーアイゴー」といって泣き、ときどき殴られている、ときいていた
またあるとき、表通りが騒がしいので出てみると、裸同然の朝鮮人労働者が、棒に両手と両足を縄で吊されたまま運ばれていた。大人たちの噂では、日本人の棒頭に逆らって制裁を受けたのだといっていた。
そしてある冬の日、わたしの家の屋根の雪下ろしにきた朝鮮人に、母があたたかいおにぎりを渡すと、涙を流して喜んでいた。
彼らはなぜ日本にきて、このような過酷な労働にたずさわっていたのか。理由はただ一つ、日本軍に一方的に捕らえられ、強制的に連行されたからである。
子供の世界でも、朝鮮人はすぐ泣くといって馬鹿にしていたし、中国人は「チャンコロ」と呼んでいた。
この傾向は戦後も続き、在日韓国人は公務員や一流企業に勤めることができなかった。
たしかに、欧米諸国もアジアを植民地化したが、日本は朝鮮人すべてに日本語を強要し、名前を日本式に変えさせ、文化まで破壊した。
敗戦まで、日本人はどれだけの朝鮮人と中国人を強制連行して、炭鉱などで過酷な労働をさせたのか。その数、百万とも二百万ともいわれているが、今、日本で生活している韓国系の人のほとんどは、この人たちの子孫である。
こんな過去があるかぎり、北朝鮮を巡る六カ国協議で、日本が訴える拉致問題に対し、中国韓国が積極的に支援してくれないのは、当然といえば当然である。

教科書で教えろ

以上の事実にくわえて、戦時中の、あの異様な軍人の威張りかた。そして朝鮮や中国への蔑視教育を思い出したら、日本が侵略戦争をおこない、植民地やそこに住む人々に過酷な仕打ちをしたことは、疑いようのない明白な事実である。
この傾向は戦後も続いたが、幸か不幸か、田母神氏はそれを知らない。なぜなら戦争が終った時、彼はまだ生まれていないからである。
ならば、これらの事実をしっかり学ぶべきではなかったか。
しかし、彼が小学校から中学校にすすんだ頃、日本の歴史の教科書では、それらのことをまったくといっていいほど教えていなかった。教科書は明治維新までで、そのあと日韓併合や日支事変の実態についてはほとんど記されていない。
これでは、侵略戦争はなかった、と思い込むのも無理はない。
そして、彼の言動を批判しているマスコミも、かつての日本については、あまりよく分かっていない。
実際、今回の事件について新聞の社説などでは、「言論の自由をはき違えている」「歴史観を述べるのは空幕長の仕事ではない」「文民統制に問題がある」といった、現実離れした記述ばかりで、侵略は事実か否かについては触れていない。
要するに、今、マスコミの第一線にいる記者たちも過去、日本が犯した罪については何も分かっていない。
こんなピンボケ状態を正すにはどうするか。
もっとも重要なことは、歴史教科書にきっかり、かつて日本は侵略国家で、アジアの国の人々を苦しめたという事実を、明確に記すことである。
自分たちの国の犯した罪を子供にしっかり教える。それを知らされることは辛いことだが、そうすることでしか、アジア諸国との真の理解は生まれないだろう。

 

日本軍が朝鮮人労働者を強制連行しただとか、日本にいる在日韓国人は強制連行された人の子孫だとか、事実誤認も甚だしいが、エロ小説専門の作家センセイは所詮この程度のレベルだと諦めて、そこらへんは笑って許すしかないのかも知れない。

ただ、老人が若い人に向かって「若輩者は黙ってろ」といきり立って怒っているようなコラムは看過できない。戦争を知らないヤツの侵略戦争否定は間違いで、戦争を体験した自分の意見は正しい。そんなことあるか。
バカ保守はよく、田嶋陽子などに「子供を育てた経験のない女が子供の教育について語るな」と言っているのと同じである。

しかも、渡辺は自分の視野狭窄とも言える身の回りの実体験をもって日本が非道な侵略戦争をしたと主張している。これも片腹痛い。
渡辺がコラムで挙げた理由は以下の3点。

(1) 子供の頃、朝鮮人労働者が酷い環境で働いていた。
(2) 当時の子供らが朝鮮人や中国人を差別しており、学校でも蔑視教育が行われていた。
(3) 戦時中、軍人が異様に威張っていた。

うーん、すごい。このリッパな認識を持ってして、日本が他国を侵し、その国の人々を酷い目に遭わせた侵略戦争を行ったと言えるとは、これまでになかった新しい認識であるとも言える。

戦争を体験した自分が言うのだから間違いないと主張する"無謬の"渡辺は、最後にアジア諸国に理解して貰うため、歴史教科書に日本が戦争中にひどいことをしたともっと書けと最後に主張して結んだ。

これ以上、今の歴史教科書に何を書けというのだろう。中国人を南京で30万人虐殺したことになっているし、従軍慰安婦は日本軍によって強制連行されたように書かれている。朝鮮半島では朝鮮人の名前から文化から全てを奪い、あらゆる金銭、資源を搾取したことになっている。
これにあと追加するといったら何だ。想像力に乏しい私には何も思い付かない。

たかがエロ小説の作家が、戦争を体験したくらいで戦争を知らない世代にもっと勉強しろと説教を垂れる。
ろくでもないジジイがいたもんだ。
 

 

カテゴリ: コラむ    フォルダ: 指定なし

コメント(11)  |  トラックバック(1)

 
 
関連ニュース:
 
このブログエントリのトラックバック用URL:

http://subzero.iza.ne.jp/blog/trackback/802267

コメント(11)

コメントを書く場合はログインしてください。

 

2008/11/19 20:55

Commented by その蜩 さん

当時朝鮮領土は日本領土であって、朝鮮人は臣民だったわけで、将軍も居れば議員も居たわけですよね。
しかも、朝鮮総督府は神経質なまでに朝鮮人の慰撫に心を砕いていて、日本人の方が逆差別を受けているのではないかと感じるほどのダブルスタンダード状態だったと、史料にあるんですが。
それは兎も角、当時から既に、ある意味今以上に法治国家、民主国家であった日本国内において、日本「軍」が自国民である朝鮮人を強制連行するなんて事が起こるわけがないんですが。
老人の思い込みというのは何ともはやですね。

そういえば、よく中国人を強制連行して炭坑で死ぬまで働かせたとかいう人が居るんですが、事実なんですかねえ。
日本国内で大量の中国人の遺骨が出たって話も聞かないですが。

 
 

2008/11/19 21:15

Commented by 先っちょマン さん

労働者の強制連行は、一部の企業が半ば騙すようにして日本に連れてきたってのがあったのかも知れませんが、少なくとも日本軍が関わったなんて話をしているのはよほどのバカだけです。
在日韓国人が強制連行された朝鮮人の子孫だという考えも、在日が言うホラをそのまま鵜呑みにしてるだけですね。

渡辺は田母神氏を始めとする戦争を知らない世代に勉強しろと説教を垂れていますが、本当に勉強が必要なのは渡辺の方でしょう。

 
 

2008/11/19 22:19

Commented by やまかんむり さん

この世代が一番性質が悪いというか被害者ですね。

よく団塊の世代が戦後教育受けてどうとかいいますが、団塊の世代は耳学問です。 この世代は多感なときに受けた印象が刷り込まれているのです。理論ではなく身近な狭い経験を通してですね。垣間見た風景、耳に入った噂話。 それが一生付きまとって、脱皮できなかった可哀想な連中です。

野中が戦後すぐの頃、列車に乗り合わせた復員兵の支那での強姦自慢話を聞いて傷ついたことがその後に影響を与えたと言っています。その延長で、南京大屠殺もあったのだと。

河野傭兵もその口でしょう。朝日新聞論調から離れられない連中です。思い込みが先にあるので、勉強しても改めることができません。

 
 

2008/11/19 22:54

Commented by 先っちょマン さん

まあ確かに自虐史観の年寄りってのは、中国で捕虜になった兵隊のごとく洗脳されているから、マトモな考え方に復帰できるのは望み薄でしょうね。大江健三郎も、嘘と分かっている自分の書物に対し、未だに講釈を垂れるくらいですからねぇ。
渡辺にしても大江にしても、日本は悪かった、日本軍は極悪だったと信じたまま、改めもせず、己のこれまでの言動を振り返ることもなく、あと数年で死んでしまうんでしょうね。

 
 

2008/11/20 00:39

Commented by syuun さん

渡辺淳一の作品は、その昔にたくさん読みましたよ。
直木賞受賞作の西南戦争後の話から始まって、医者ものの短編集、伊藤整風の恋愛?小説など。
しかし、年を取ってきてからもう30年以上読んでいませんね。
何故なら、あまりに現実と遊離し始めたからなのでしょう。早く言えば、下らない小説が多くなりました。

それと同時に、老人になるとどうしてああいう馬鹿になるのか、その理由を考えたら、戦争の現実を知っている人が健在のうちは言いたくても言えなかったということが判りました。
例の中国と同じです。

私の父母、学校の教師は戦争に行った時代で、教員はほとんど中国で軍人(将校・下士官)をしていましたから、戦争時代のことはよく話しに聞きました。

少なくとも、この渡辺氏などの戦中派というのはどういう神経なのか良く分かりませんが、戦争のトラウマがあるのは確かです。

 
 

2008/11/20 00:44

Commented by トリC さん

俺の父親もこの人と全く同じ世代なんですがそっくりです(笑)

まず戦争体験しているので知っている気になっている。ですので大前提で井筒監督の様に説教口調になってしまう。

しかし何故戦争始めたのかの大義名分すら知らない。教えられたのはアメリカが100%正しくて次の日本を背負ってたつ自分達が目指すべき国。自分達より上の日本人はとにかくダメな人達だった。だから謝れない。ああいう大人にはならないように。

と、こういう風に教育されてるから田母神論法なんか彼らの最も忌み嫌う上の世代の考え方に聞こえるでしょう。そしてそれを否定する自分たちの何て先進的思想な事か、とね。団塊がやたらと目立ちますがその上のここら辺までの世代も見事にやられちゃってます。

 
 

2008/11/20 06:30

Commented by ぐりぐり さん

初めてコメントします。

渡辺氏の論調は個人の体験が歴史観を支配してしまう典型でしょうか。
彼に戦争体験がある? 敗戦当時に小学校6年くらいで、当時は北海道にいた?
そんなのが戦争体験なのですか。
戦争があった時代に生きていたと言うだけのことでしょう。
そんなこと言ったらわれわれだって戦争体験者ですよ。
イラクに日本軍を派遣したではありませんか。 後方支援だけだけど戦争に参加したことに違いはありません。 その時代に生きたわれわれも戦争を体験したといえます。

それにしても短絡、稚拙な意見ですね。 軍人が威張っていたから、朝鮮、中国人を蔑視していたから侵略したに違いないとは。 あきれてものが言えません。

個人の主観ではなく客観的に見てほしいものです。 でもどこまで行っても平行線なのでしょうね。 お互いの主観でしかものを言わないし、歩み寄ろうともしないし。
侵略があったと言うものは理屈はどうあれとにかくあったと言うし(渡辺氏)、ないと言うものはとにかくなかったと言う(田母神論文)。
ひとつの事象も見る角度が変わると違って見えると言うことが何故分からないのだろうか。

 
 

2008/11/20 10:34

Commented by よもぎねこ さん

>そしてある冬の日、わたしの家の屋根の雪下ろしにきた朝鮮人に、母があたたかいおにぎりを渡すと、涙を流して喜んでいた。

 当時は日本人でも白米のおにぎりなど、そう食べられたわけではないのでそれは喜んだでしょうね。 ちなみに父は米作農家で育ったけど、米を腹一杯食べる事はできなかったそうです。

 でも除雪のバイトをして稼いでいる人が、強制連行されて来たなんて、どうやったら思いつくんでしょうね?

 
 

2008/11/20 21:22

Commented by stctaku さん

渡辺淳一は思い込みで、朝鮮人労働者が日本軍によって連行されたと言っているようですね。韓国の歴史もほとんど知らないようだ。作家も可笑しなのが多いですね。

 
 

2008/11/20 23:07

Commented by 先っちょマン さん

>> syuunさん
渡辺淳一のコラムを読んで、読売のナベツネを思い出しましたよ。同じ渡辺でジジイ同士なわけですが、ナベツネは急に昔のアカ時代を思い出したかのように靖国はダメとか言い出して、読売の社説を変えさせ、変な歴史検証を始めさせました。
ツネオは急激に左傾化して歴史について説教を垂れ、ジュンイチは昔どうだったか知りませんが、多分ずっと自虐史観で、ツネオ同様に頭の超固い爺さんなんでしょう。
以前、「たかじんのそこまで言って委員会」にいつものニヤケ顔で出ていましたが、今度は自身の歴史観を同番組で披露して、田嶋陽子と共闘して貰いたいものです。

>> トリCさん
身の回りの状況だけ見て、知ったようになってしまうのはしょうがないことなのかも知れませんね。「木を見て森を見ず」とはよく言ったもんです。
そういう私も、身近な同和地区だけ見て、「同和差別なんかなくて、逆差別ばっかだろ」と思うわけですが、それもこれと同じなんでしょうか。
ま、いずれにせよ、自分が貧乏だったとか、生きるか死ぬかの生活をしただとか、そういう説教ってのはロクなのがないですな。思い込みが激しくて。
山本夏彦氏など多くの戦争体験者が語っていますが、戦時中は大変だった人もいるだろうけど、実際はそれほど大変でもなかった人が大勢いるんですよね。そういう話は伝わらなくて、辛かったとか誰かが死んで悲しかったという話や説教ばかりが伝わるから、昭和20年までが暗黒史のようになってしまうんでしょうねぇ。

 
 

2008/11/20 23:07

Commented by 先っちょマン さん

>> ぐりぐりさん
どうも初めまして。
このコラム、下線を引いた文中の小タイトルは新潮社の編集が付けたんでしょうが、どう思いながら編集したのか実に気になります。原稿を受け取った担当の人も「さすがにこれは…」と思ったことでしょう。
週刊新潮は論調は保守路線で、自虐史観などには厳しいわけで、朝日新聞の論説委員などをビシビシ叩いているんですが、自誌に連載を持つ有名作家まで叩けりゃいいんですけど、さすがにそこまではいくら新潮社といってもできないんでしょうね。
在日反日作家の柳美里をお抱え作家みたいにしているのと同じですね。
まあ、何にせよ、自虐史観で凝り固まった爺さんには何を言っても無駄なんで、言っても言わなくても大して変わらないとは思いますけど。

>> よもぎねこさん
「何故朝鮮人が北海道にいるのか」と渡辺少年は思い、後に「あれは日本軍が連れてきた」という嘘を教えられ、偉そうにしていた軍人と重なってそう思い込んだのでしょう。そのまま50年以上過ごしたら、嘘も脳内で真実に昇華してしまうのかも知れません。
それか、渡辺は、朝鮮人を見下したという自身の過去を清算するかのように、全員が日本軍に強制連行された可哀想な人だと思い込むようになったのかも知れません。

>> stctakuさん
今時、日本にいる在日韓国人の子孫が強制連行されてきた人の子孫だなどという戯言は、当の在日ですらあまり口にしないようになっています。渡辺は一体いつ仕入れた知識を今さら誌面で披露しているんでしょうね。

 
 
トラックバック(1)

2008/11/20 09:57

渡辺淳一  ろくでもないジジイ [これ 見逃すな]

 

先っちょマンブログ エロ小説家のお説教 今日発売の週刊新潮11月27日号で、「失楽園」などで知られる作家の渡辺淳一が田母神論文についてものすごいコラムを書いていた。あまりにケッサクだったので紹介したい・・・…