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茂田浩司 (c)バトル三昧

6月4日の奇跡(後編)
〜坂田健史が見せたボクサーの凄味

2004年06月16日

世界初挑戦の舞台で大きな可能性を示した24歳の挑戦者・坂田
世界初挑戦の舞台で大きな可能性を示した24歳の挑戦者・坂田【 スポーツナビ 】


 14日、入院中の坂田健史に初めて外出許可が下りた。
「シャバの空気だー!」
 久々に病院の外に出た彼はそう言っておどけていたという。

 6月4日、WBA世界フライ級タイトルマッチの坂田に「ボクサーの凄味」を見た。初回から王者ロレンソ・パーラの猛攻を浴び、2ラウンドには右フックでアゴを割られながらも、劣勢を挽回し、王者をダウン寸前まで追い詰めたのだ。激痛の中で「もう1ラウンド、もう1ラウンド」と念じながら、12ラウンドの長丁場を戦い抜いた坂田の凄まじい闘志と勝負への執念に心を打たれた。

 王者ロレンソ・パーラはアマチュア278戦、プロ転向後は22戦22勝(17KO)のキャリアの持ち主だ。軽快なステップから体を柔らかく使って放つ、振り幅の大きな右アッパーを始め、実に様々な角度からパンチを繰り出す。2ラウンドの強烈な右フックには思わず声を上げた。


アゴを狙い打ちされ「心が折れそうになった」が…

   【 スポーツナビ 】
 試合後、そのパンチで坂田がアゴを骨折したことを知ったが、テレビで見ている限り、坂田の口からの出血がひどくなった5ラウンドまで坂田の異変には気付くかなかった。
 だが、至近距離で戦っているパーラは当然、坂田の異変に気付いたことだろう。向かい合う坂田の口が半開きになったことを見て「しめた」と思ったに違いない。口からの出血がラウンドを追うごとにひどくなる挑戦者を見て、アゴを割ったことを確信し「早く決着を付けてやろう」とほくそ笑んだことだろう。

 2ラウンド以降、パーラの右アッパーで骨折したアゴを狙い打ちされるたびに、坂田は「心が折れそうになった」という。試合後に坂田を診断した医師は「普通なら耐えられる痛みじゃない」と驚いたという。

 だが、ここから坂田は驚異的な精神力を見せる。3ラウンド、口から血を流しながら、それでも前に出て左のボディーを打ち込むと、精神的には遥かに優位に立ったはずの王者がよろよろと後退し始める。4ラウンドには坂田のボディーが立て続けに王者を捉え、無敗の男が苦悶の表情を浮かべながら体をくの字に折った。「このままでは倒される」との危機感を募らせたのだろう。パーラは大振りのフックで押し返そうとするが、6ラウンド、坂田に左フックを叩き込まれると、王者はダウンしまいと必死に坂田にしがみつき、ロープを掴んでこらえた。この時点で序盤に優位に立ったはずの王者は、完全に追い込まれていた。

 この試合の前に「バトル三昧」で行なった佐藤修と坂田の対談の中で、佐藤は坂田をこう評した。「試合を見てて、全力で戦い抜けてる。集中力が切れずに、最後まで戦えてるのが凄いです」

 坂田の反撃を見ながら、佐藤の言葉を思い返していた。坂田は自分の持ち味を初めて立った世界戦の大舞台で存分に発揮しているのだ。何と強いハートの持ち主なのだろう。
 7ラウンド以降、王者は足を使い、下がりながら軽くパンチを合わせる戦術に切り換えた。坂田も食らいつき、10ラウンドに左のボディーで王者の動きを止める。このラウンド終了のゴングが鳴った後、王者はなおも左フックを坂田に打ち込んだ。挽回に必死だったのだ。坂田は最後まで前に出て、王者は下がりながらカウンターを合わせ、執拗なクリンチで誤魔化した。


「痛くてキレる」坂田の勇敢な戦い

 判定は2ー0で王者の勝利。軽く合わせるパンチと、相手をグラつかせるパンチを同じ「1発」として換算する(ように見える)今のボクシングの採点では、こういう結果になるのだろう。だが、あの試合に6ポイント差を付けてしまうジャッジと、王者の度重なるクリンチに「ホールディング」の反則を採らないレフェリングは、もはや門外漢の格闘技ライターには理解不能だ。一般のファンから「坂田は勝ってた」との声が上がるのも当然で、こうした「一般のファン」と「専門家」の感覚のズレがボクシングをマニア化させるのである(格闘技界は「国際的競技」ではなく「お客様本位」なだけに、このあたりのズレはすぐ修正出来るので心配はない。もっとも、それはそれで別の問題もあるのだがそれについては今後折りに触れて指摘したい)。

 ちなみに、あるボクシング関係者は溜め息まじりにこう呟いた。
「ベネズエラの選手に勝つのは本当に難しい」
 ベネズエラにはWBAの本部がある。にわかに信じがたい話だが「6ポイント差でパーラ勝利」という採点を目の当たりにすると……。

 試合後、アゴに2箇所の骨折が判明した坂田は、9日に4時間半にも及ぶ手術を受けた。手術後、麻酔が徐々に切れてくるに従って、坂田は激しい痛みに襲われたという。あの試合を見た人なら「激痛にも黙って耐える坂田」を想像するかもしれないが、実際の坂田は「あまりにも痛くて病室でキレた」そうである。元々、坂田は「痛みに弱い」タイプらしい。リング上の勇敢な戦いぶりからは想像出来ないが「痛くてキレる」坂田を見た関係者は呟いた。「試合の時もアゴの痛みが怒りになって、その感情を思いっきりパーラにぶつけてたのかも……」坂田のアゴを割ったパーラが、坂田の猛反撃を食らったのは「自業自得」だったということか。

 2004年6月4日は忘れられない日になった。
 気持ちで技と体力差を上回った土井広之と、激痛に耐えながら王者を追い詰めた坂田健史にはお礼を言いたい。
 凄い試合を見せて貰いました。勇気を頂きました。本当にありがとう。



【関連記事】
坂田vsパーラ(04.6.4)
土井vs後藤(04.6.4)
6月4日の奇跡(前編)(04.6.9)


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