2008-11-17
■偽科学発見テスト
【偽科学批判者の科学的資質を問うための、偽科学発見テスト】
ウィキペディアの以下の項目に含まれている引用部分は、極めて偽科学的説明である可能性が高い。科学的説明の逸脱とその理由を説明しなさい。
江戸時代の江戸では、富裕層のあいだで玄米に替えて精米された白米を食べる習慣が普及し、将軍をはじめ富商など裕福な階層に患者が多かった。江戸時代末期には一般庶民も発症し、江戸患いと呼ばれた。大正時代以降、ビタミンB1を含まない精米された白米が普及し、副食を十分に摂らなかったことで非常に多くの患者を出し、結核と並んで二大国民病とまで言われた。
高木は海軍において西洋式の食事を摂る士官に脚気が少なく、日本式の米を主食とし副食の貧しい下士卒(兵曹および兵。のちの下士官兵)に多いことから、栄養に問題があると考え、明治17年(1884年)軍艦筑波に、この前年別の軍艦が行なった遠洋練習航海と食生活以外は全く同じ内容で遠洋練習航海を行なわせる試験案を上策し、それが採用され、結果として西洋食の艦において脚気患者が出なかった。このことから栄養障害説を確信したとされる。下士官兵にはパン食は極めて不評であったので、西洋食(パン食)から、同じ麦を食材とした麦飯に海軍の食料は変更された。これによって、海軍における脚気は根絶された。
私のエントリに偽科学批判ぽい言説を投げかけたがゆえに回答を期待してる人のリスト:順次更新
回答をいただけたらリンクを付けておきます。言うまでもないけど、皮肉じゃなくて、なるほどっていう回答を求めていますよ。
既回答
ご回答ありがとう。明晰なお答えでした。
全体としては主食を白米にすることと脚気にかかることとの直接の強い因果関係が容易に想定できるように書き過ぎている、ってところなんでしょうか。
ええ、要点はそこにあります。科学とは基本的に因果関係の説明であり、これがこの記述ではとても「直接の強い因果関係」で書かれています。そして、「直接の強い因果関係」は科学的な説明とみなされがちです。しかし、この記述には、その割に、それを支える科学的な説明はなく、しかも、ビタミンB1の欠乏が誘導されている点で、私はこれは間違った、科学的説明であると考え、例題としました。
話はもうすこしあるにはあるのですが、もし機会があったら書きましょう。
余談ですが、コメント欄での、lets_skepticさんとの対話を通して、「ニセ科学」の問題領域がなんとなく以前よりわかったように思えました。もしそれが前もってわかっていたら、この問い掛けはしなかったかと思います。その点で、お手数をかけて申し訳なく思います。
参考
最初にいうと、私がざっとぐぐった感じでは、この問題を解くための、ネット上の情報がめっからなかった。その意味ではネットの限界指摘にもなるといいなとは思う。追記:探すとあるにはあった。
それはそれとして、科学的説明とはなにかの参考になるリンク。
ぶくまレス
⇒はてなブックマーク - 偽科学発見テスト - finalventの日記
2008年11月18日 rspub わからない。偽科学というのではなく、偽科学的説明、なんですよね?結果として患者が出なかったり、根絶されたり、というのはわかりやすすぎる結果という点でそれっぽいけど、それが事実なら仕方ないし。。
偽科学と偽科学的説明の際にはちょっと難しいけど、とりあえず、このウィキペディアの説明に含まれている偽学的な思考はどこかという問題に捉えて下さい。
個別にいうと、これって、何の「結果として」なのか、因果関係あたりがポイント。
2008年11月18日 kuroiotona 例題としては大変興味深い。でも、科学ではなく論理的思考の問題だと思うんだ。
論理的思考に加えて、この問題には、さらに背景があります。その他の仮説、その妥当性の評価。統計の検討など。
2008年11月18日 mihrdat /(全面書直)山下政三の本読んだ。wikipedia記事の分量考えればあげつらうほどでもないじゃん(一つの類例はミリカンかな)。研究史のこの手の行過ぎは普通。少くとも「偽科学」は明らかに大げさ。知識自慢したいだけ?
このあたりから難しい領域に入ってくるわけなんだけどね。まあ、「少くとも「偽科学」は明らかに大げさ。知識自慢したいだけ?」というのは、甘んじて受ける部分はあるかな。というか、たしかにそういう面もあるとは思う。
2008年11月20日 shokou5 科学, 科学哲学 科学は論理的営みであると同時に技術的営みでもある。実験して論文を書いて査読されて…というネットワークの中に根付く技術知がかなりある。単独の言説だけから科学か否かを問うことは「究極的には」不可能。
いえ、科学的言説は、特定の方法論がもたらす、市民社会における一つの妥当な合意が目的となるから、究極を問う必要はなし。
2008年11月21日 complex_cat science, logic 切られ役のWikiの引用が論考を展開する上で,適正な材料であるように感じないのです。噛ませ犬かあるいは,相撲の土俵に,「同じ裸だから」競泳のアスリートを引っ張り上げて叩いたような感がするのですが。
まだ第二段階の議論を展開していないせいもあります。
2008年11月21日 nanahusi まず出題者がどういう意図を持って出題しているか推測して、その後に出題者がどういう風に「偽科学」という言葉を捉えているか推理する。なんか論理思考を試すってより国語の問題を解いている気分になった。
まず単純にこれは科学的記述じゃないなということがわかることが第一段階で、そのレベルで、これは間違っているということになります。
2008年11月22日 mori-yoshiro 「偽科学批判ぽいのを投げかけられた」ってたった二人なのかいな?それでこんなキレなくても・・・。しかも話全然変わっトル。
ああ、キレてないですよ。mori-yoshiroさんが、「finalventは偽科学的」とかぶコメされると三人目になれますよ(冗談です、為念)。
2008年11月22日 ochame-cool a. ☆☆☆, c. 科学技術 finalvent文体で人生を語る分には深みがあってよいと思うけど、その文体で科学を語られると論点整理などめんどくさいかな。↓「国語の問題」フイタ。
結論から整理して書けばすっきり書けるんですけどね。
2008年11月22日 kmiura えー。finalventさんはそもそも非科学的なところがよいもちあじなわけで、ニセ科学とかそうしたレベルではないと思っていたのだが。議論するだけムダだと思う。というか、非科学は科学を内包するからなあ。
この文脈でこう言うといけないかと思うけど、ラカトシュとか出しても、前提的に通じない感じはしてますよ。そこは最初から議論にならなかな。余談ですが、反証可能性とかでネットで人気にあるポパーですが、エックルズなんか一緒にとんでもない世界像を出しているんですよ。
2008年11月22日 yukitanuki うお、あれからこんなことに
2008年11月22日 kana-kana_ceo 議論 「ごめんなさい、ごめんなさい、もう許して、ひー」って、なってる。
2008年11月22日 kamezo ニセ科学, ニセ科学批判批判, 科学, 議論, 読まずに書く人, 過度な一般化, リテラシー, コミュニケーション つくづく知らされた。頭の良い人や知識豊富な人には、それゆえの不幸というか落とし穴があるのだと。apjさん(の切れ味、明晰さ)には頭が下がる。finalvent氏には新エントリで整理を付けていただきたいなあ。
もうそれで終わりでいいしょ。「ごめんなさい、ごめんなさい、もう許して、ひー」。
2008年11月22日 NATROM 医療 「「ペニシリンによって結核が治癒されることで、社会の結核は事実上克服されたといいレベルまで抑制された」という命題です。これは、科学的に間違いです」。その通りだろ。
つまり、「科学的に間違いです」は間違い、と?
2008年11月22日 NATROM 科学 finalventさんが何を言いたいのか理解できない。科学的資質を問う問題を出せるほどの科学的資質をfinalventさん自身が持っていることを示して欲しい。
「科学的資質を問う問題を出せるほどの科学的資質をfinalventさん自身が持って」いないことでFA、でよいかと。
とらばレス
レベル低すぎ。
ゲーム脳は、定義とローカリゼーションに失敗している。血液型性格判断は心理学的(統計学的)に否定されている。以上。
で。
そうじゃ無くて、ニセ科学に関する知識の無さをどうにかすれば? じゃないかと。
いやそうじゃ無くてと言いたいわけです。つまり、「ニセ科学に関する知識」を丸暗記して教条的に対応している人たちに科学的な考え方の資質はありますかのテスト。
ある言説がニセ科学的であるかどうかを個人で頑張って判断する必要は無い。解らなきゃ訊けばいいんだし。
これも同じこと。教条主義に陥るだけ。宗教と同じなる。つまり、まったく偽科学批判にならないということ。
ある言説がニセ科学的であるかどうかというのは、様々な資料を検討して行われるものだから、どう答えるべきか判然としない。
いえ、様々な資料を検討してごらんなさいというのがこのテスト。
補助線的擬制の疑問。
・腸内造血説が偽科学である理由はなにか?
・結核を社会的に克服したといえる水準まで抑えたのはペニシリンか?
次。
⇒現代の知識で過去の行動を判断する愚 :: Archives
基本的にその言い分が当てはまるなら千島学説もおK。
なお、ここに書かれているのは歴史文書ではなく現代の見解。
そして。
脚気が、食物摂取におけるビタミンB1欠乏以外の理由で起きるかどうかについては、私も知識が無いのでわからない。何か、代謝異常を起こすような病気があれば、脚気を発症することがあっても不思議ではないが……。しかし、当時問題になっていた、広く国民の間で発症していた脚気の原因は、ほとんどがビタミンB1欠乏によるものであったと考えられるので、まれに発症する別原因による脚気があったとしても、この文脈において考慮する必要はない。
この程度。
なお、「スキャンダルの科学史」には、史実としての記述として、高木が、「脚気は栄養のバランスの問題」であると考えるに至った理由として、監獄食と海軍食の比較からだと書かれている。が、これも、史実をどう確認するかという問題であり、擬似科学の問題ではない。
偽科学は非科学的な思考・方法論の帰結であって、同質。
また、同じことを繰り返すけど、「史実をどう確認するかという問題」ならエジプトのミイラは復活しますな。
もし、高木の推論の仕方や試験への持って行き方が、今の知識を基準とした場合に何か問題があるものであったとしても(同じことを今実行したら擬似科学と呼ばれるものであったとしても)、それは当時の実験医学の水準の限界によるものであり、現代の科学の知識を元にして批判すべき対象ではない。
占星術の解明は23世紀を待てとか。
次。
⇒わかってないのに「わかってしまった」人 - Skepticism is beautiful
現在行われているニセ科学批判*3において、もっとも端的な「ニセ科学」の定義は以下のようなものになる。
科学を装っている*4
科学ではない
これを批判するのが「ニセ科学批判」であり、それ以上でもそれ以下でもない*5。
これは単純にわからない。
科学における間違いは、間違いとわかるまで(正確に言えば社会に妥当な水準でその真理と虚偽の合意が受け入れられるまで)は、ただの科学であり、それ以降は、たんに間違いであり、科学ではなくなる。
「ニセ科学」を間違った科学と別に定義を必要とする理由が、単純にわからない。
あるいは百歩譲って「ニセ科学」なるものが独自にあるとしても、通常の科学方法論とその考え方さえあれば、対処にまるで困らないし、むしろ、教条的に「ニセ科学」のリストを暗記したかのように批判することで、科学的方法論がスルーされてしまう。
次。というか。
⇒finalvent氏のコメントにさらに突っ込んでおく :: Archives
基本的に前回と同じ、および、コメント欄の展開と同じなので、私としては再コメントはない。それをもって、finalvent敗北宣言とされてもかまわないし、「思い上がるな」はまさに、そうかもしれないなと反省の契機としたいと思ってますよ。
あと、めっけられたこの資料はよいですね。
⇒「我が国の被感染性疾患疫学的研究の歩み」(pdfファイル)
高木の研究について山下政三はその著書の注で、以下のようにコメントしている。「この業績は高木兼寛が功なり名遂げ、引退後に回想として述べているのが中心であり、実態が修飾されているように感ぜられる。環境因子の調査にしても全海軍の実地調査には膨大な数の調査員と、期間が必要であり、それには記述されている1年半くらいではできなかったのではないか。また探しても海軍には疫学調査の成績、記録が存在しない。高木が書類調査を実施したとしても、当時の海軍には疫学に役立つような記録はほとんどなかったようであり、新たに調べる必要があった。高木は根拠となった疫学的調査の成績を一部しか示してない。N対C比の改善にはいくつかの方法が考えられるのに、なぜ、一挙に洋式を採用しようとしたのか。またパン食の評判が悪いとなると、すぐ翌年麦飯に変更している。こうした検討を最初になぜしなかったのか。彼は初めから「タンパク質不足、米食の害」を原因と仮定してその検証に邁進したのではないか、高木は脚気伝染説、中毒説には一顧もくれないほど、全く発言をしていない、これは何を意味するのか、」などと疑問点をのべている。大学での研究者や森林太郎らが指摘したように、脚気発症や予防機序についての科学的根拠については、高木はN対C比以外に何も示していない。しかし病の予防法は、証拠がそろわなくても、機序が推測でも、実施できるわけで、理論は後から判明することも少なくない。ただ高木の場合はその後理論的な研究はあまり発表していない。高木の脚気N対C比仮設は、その後の各種の動物実験追試で否定された。
特に。
脚気の問題は、医学研究は如何にあるべきかを考えるよい例である。結局疫学的研究が結論に至る道程におおきな役割を演じたことである。しかし確率論的な研究結果に対する認識はきわめて低かったので、解決には数十年を要した。わが国では伝統的に決定論大きな比重を置いており、確率論的な研究に関心が少ない。このことは、現在の医学研究における疫学の立場を見てもわかる。脚気の問題は現在の疫学の問題でもある。
そう、だから、このウィキペディアの項目を取り上げたのですよ。
次。
⇒「偽科学」と「ニセ科学」? - 『digital ひえたろう』 編集長の日記★雑記★備忘録
ご指摘の件、つまり、「ニセ科学」を私が理解していなかったというのは、まったくそのとおりなので、それはそれにて。
あと、「レベルが低い」について、同エントリに寄せられたコメントに同意する部分多々なので、つまり、BSE騒ぎとかタミフル副作用騒ぎとか、原発の耐震性とか、ミサイル防衛とか、科学的評価が難しい領域を積極的に取り上げて、マスコミを啓発してくれたらいいのに、とそういう感じです。
私に対して「finalventは水伝がわかってない」と言われても、うーん、「ニセ科学批判」の意味合いはわかってなかったと思うけど、そもそも水に語りかける人については、ちょっとねという感じです。
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