中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索

参院委採決先送り 「景気最優先」はどこへ '08/11/19

 臨時国会が波乱含みの展開になってきた。民主党はきのう、対テロ新法改正案などについて、第二次補正予算案が今国会に提出されるまでは、参院委で採決に応じないことを決めた。このままでは三十日までの会期の延長は避けられない見通しとなった。

 追加経済対策の裏付けとなる第二次補正予算案を、麻生太郎首相がなかなか提案しない。これに対し、民主党の小沢一郎代表が「すぐに出すと言って出さないのは公約違反だ」と迫る構図だ。

 背景に、解散の時期をめぐる与野党の党利党略が透けて見える。しかし国民が求めているのは、緊急対策を行ったうえで、実行力のある政権が本格的な経済政策にしっかり取り組むことであろう。与野党とも、その点を忘れてはなるまい。

 対決姿勢を民主党が強めたきっかけは、麻生政権で初めてとなるおとといの党首会談だった。

 小沢代表は、景気対策が最優先と強調してきた首相の言葉を盾に詰め寄ったものの、麻生首相は「編成作業中。努力している」として確約を避けた。反発した民主党が、採決の運びになっていたきのうの外交防衛委の審議を拒んだ。

 急変した民主党の態度に、政府や与党の幹部は「法案を人質に取り、政局にしている」「委員会日程をほごにするのは横暴」などと批判を強めた。

 これまでの経緯をさかのぼって考えてみよう。十一月にもあると思われた解散が延び、次のチャンスは年明けの通常国会というのが、与野党で一種の暗黙の了解になっていた。ところが首相はサミットで訪米中、「二〇〇九年度予算の成立が最優先」として、解散をさらに来春まで先送りする意向をにじませたのである。

 緊急を要するはずの二次補正予算案を出さず、本格政権が取り組むべき新年度の予算案まで麻生首相がやるというのか。それでは政権がずるずると延命するだけではないか…。これが民主党の言い分である。それを「政局にしている」と言うのは、議論のすり替えと言われても仕方あるまい。

 二次補正予算案が出されれば、衆参予算委は野党が政府を追及する格好の舞台になるだろう。政府は、定額給付金の所得制限をするかしないかの判断を市町村に丸投げした。道路特定財源を一般財源にした後に地方に移すという一兆円についても、閣僚の足並みが乱れている。急ごしらえの政策をめぐって激しい攻防となろう。

 首相も、それが嫌だから予算案を出さないのだ、とみられては不本意だろう。そうでないなら、スピード感のある緊急対策という「初心」を貫いたらどうだろう。

 内閣の発足から二カ月足らず。金融危機によって明らかになってきた景気後退、世論調査での支持率の低迷。首相にとっては誤算続きに違いない。

 政権の足元はぐらついたままだ。そうしたことも考え合わせると、解散の時期を本気になって探るときではないか。




MenuTopBackNextLast
安全安心
おでかけ