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【編集局デスク】

迷走首相へ

2008年11月22日

 麻生首相の失言と迷走が止まらない。もはや「おっちょこちょい」では片付けられないほど深刻だ。

 医師不足に絡んで「(医師は)社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言。一夜で撤回し、日本医師会長に頭を下げた。

 道路特定財源の地方配分などをめぐる発言でも、自民党内から猛反発され、軌道修正を余儀なくされた。「『交付金』を『交付税』と読み間違えたのだろう」と皮肉られる始末。

 だが、この一連の失態は「頻繁」を「はんざつ」、「踏襲」を「ふしゅう」と読んだ愛嬌(あいきょう)のたぐいとは全く違う。自身の認識の披歴であり、政策の中身にかかわる言及だからだ。

 迷走の極みは、例の「定額給付金」である。

 首相は当初「全世帯に」と明言しながら、バラマキ批判を浴びるや「豊かな所に出す必要はない」。二転三転した揚げ句、所得制限を自治体に丸投げした。

 総額2兆円もかけるというのに、まるで腰が据わっておらず、無責任極まりない。丸投げについても平然と「地方分権ですから」。失言どころか暴言だ。

 もともと生活支援か景気浮揚か目的があいまいで、効果もはなはだ怪しい。案の定、世論調査では6割の人が「評価しない」「不要な政策」と答えている。

 本紙にも読者の皆さんから意見が寄せられている。もちろん「素直に喜ぶべきだ」との声もあるが、心打たれるのはこんな訴えだ。

 「私たち高齢者が求めているのは、2万円ほどのお金より、医療や介護が安心して受けられることです」と66歳の女性。

 「年金暮らし」と言う男性は「生活は苦しい。でも2兆円は子どもたちの教育費や医療費に使って。子どもは国の宝だから」。

 この国の今と未来を、誰よりも見据えなくてはならないのは、麻生首相、あなたではないですか。

 (名古屋本社編集局長・加藤 幹敏)

◆「編集局デスク」が本になりました

 タイトルは『緩急時在−編集局長のコラム』。ことし3月まで2年半余りにわたって掲載したものをまとめました。お求めは書店、本紙販売店で。定価1700円。問い合わせは中日新聞社出版開発局=(電)052(221)1714=まで。

 

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