ネット通販会社から振り込まれるアフィリエイトの報酬は、月額1千万円にもなった
04年7月739万円、8月615万円、9月538万円――。都内の私鉄に勤めていた男性(36)の預金通帳には、毎月、そんな金額が書き込まれていた。そして06年3月、通帳の入金欄には「1171万円」と記された。
ネット上の日記・ブログなどに商品の紹介を載せて、利用者を通販会社のサイトに誘導する「アフィリエイト」と呼ばれる仕組み。商品が売れれば、通販サイトから数%が報酬として振り込まれる。それが、通帳の金額だった。
車掌として勤めて8年。勤務について行けず、体調を崩した。
アフィリエイトのことが目にとまったのは03年。ネット検索で上位に表示されることが、ビジネスのチャンスになる。そんなことが関心を集めていた。「うまく組み合わせれば、お金になるのでは」と考えた。
通販サイトに掲載されている2万点分の商品情報。それを丸ごとコピーしてきて、大量に商品の紹介ページを作る。検索サイトに表示されやすいように、よく使われる検索語もページの中にどっさりと埋め込む。
様々な作業を、プログラムで自動的にできるようにした。プログラムは3年ほど前から、趣味をかねて独学で勉強していた。
黙っていてもページは増えてゆく。四つの、デザインを少しずつ変えたウェブサイトで、ページ数は100万という規模になった。
自分で作った中身は何もないのに、検索サイトでは、面白いように表示された。商品をさがして、人々は検索をする。そして検索結果を見て、どんどん男性のサイトをクリックする。
「思った通りだ」。通販サイトから最初に振り込まれたのは2万円。その額は一けたずつ上がっていった。10カ月後、預金額は3千万円に。車掌を辞めた。
大型四輪駆動車、実家のローンの完済、2カ月間の海外旅行。株のデイトレードにも金をつぎ込んだ。
だが05年、男性のサイトが突然、ネット検索からはじかれるようになる。金目当てで大量に作られる「迷惑サイト」の一つ、と判断されたようだ。閲覧件数は目に見えて下降していく。
「報酬」も06年をピークに徐々に減り始め、07年6月には20万円を切った。それまで稼いだ総額は約2億円。だが残高は2千万円になった。
生活のため、ホームページ制作会社に再就職した。年収は500万円足らず。男性のサイトは、ほとんど人目に触れぬまま、今もある。
「迷惑サイト」が、ネットにあふれている。その現状をみる。(竹原大祐)