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支えの現場:外国人受け入れを前に 日本で看護・介護を目指す労働者/上 /広島

 日本で看護師や介護福祉士を目指すインドネシア人が、来年2月から働き始める。インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づくもの。人手不足に悩む日本の医療・福祉現場と、高レベル・高賃金の日本で働くことを望むインドネシア人。看護・介護分野で初めての外国人労働者の本格的な受け入れだ。広島の受け入れ先となっている病院や特別養護老人ホームを訪ねた。【大沢瑞季】

 ◇まずは日本語の研修 期待する病院「国は違っても同じ心」

 今月16日、宮島を望む高台にある阿品土谷病院(廿日市市阿品4)。来年2月から看護職員として働くインドネシア人2人が訪れた。同病院は、介護老人福祉施設を併設する219床の療養型病院。病棟やナースステーションなどを見学した。

 インドネシアで4年半の看護師経験があるテレシア・マリア・トジ・ピオさん(27)は「日本語をきちんと覚えたい。働くのが楽しみです」と期待に胸を膨らませた。8月に来日し、神戸市で終日語学研修を受講。トジさんは「丁寧語や漢字が難しい。ごみの仕分け方も習っています」。

 イスラム教徒で、頭を布(ジルバブ)で覆うエルナ・スリパルティニさん(26)は、勤務中もジルバブの着用を希望する。病院側はそのまま勤務してもらう予定。百々真智子看護部長は「患者さんが最初は驚かれるかもしれないが、看護を目指す人は国が違っても同じ心を持つ。信頼関係を築けるだろう」。宗教的な理由で豚肉やアルコールは飲食できないため、弁当を持参してもらう。1日に5回の祈りの時間にも、部屋の用意を検討している。

    ◆

 今年8月、インドネシア人計208人が来日し、半年間の日本語研修などが始まった。研修終了後は、日本人と同じ給料で看護助手や介護職員として働きながら、看護師や介護福祉士の国家試験合格を目指す。

 看護や介護の現場では人手不足が深刻だ。介護福祉士は、全国の養成校入学者数は、06年に1万9289人だったが、08年は1万1638人と大幅減。看護現場でも、都会の大病院が地方で看護師の求人を強化するなど、不足感が強い。

    ◆

 「かんじは100じがべんきょうしました」。介護福祉士候補を受け入れる特別養護老人ホーム正寿園(北広島町壬生)では、インドネシア人女性(28)が平仮名と少しの漢字を使って、パソコンメールで近況報告をする。着実に上達しているが、漢字は難しい。

 エルナさんらが一番心配しているのは、国家試験に合格できるかどうか。言葉の壁がそびえ立つ。また、国家試験は、看護師は3年間で3回、介護福祉士は3年の実務経験を積んだ後に1回の受験チャンスしかない。不合格なら、帰国するしかない。

 エルナさんはサウジアラビアで看護師として働いていた。「インドネシアにいる夫も日本で働けたらいいな」。看護師に合格した後の生活を夢見る。

 阿品土谷病院を経営する医療法人あかね会の今一浩総務部長は「国家試験に通ってもらうのが一番の課題。日本語の勉強に重点を置く」と話す。介護現場を支える重要な人材ととらえる正寿園の水晴男施設長は「介護福祉士の合格率は日本人でも5割と難しい試験」と話し、支援体制を検討している。

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 ◆日本・インドネシア経済連携協定(EPA)

 経済連携を強化するため、労働市場を開放するのが目的で、厚生労働省は「看護・介護現場の人手不足に対応するためではない」と説明している。2年間で、看護師400人、介護福祉士600人を上限に受け入れる。看護師や介護福祉士の国家資格を取得した場合は、期限なく日本で就労できる。

毎日新聞 2008年11月21日 地方版

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