【萬物相】時代に見放されたソニーのウォークマン
▲ソニーの技術者たちはプレスマンから録音機能を取り去り、ステレオ再生が可能なように改造した。そして有り合わせの大きなヘッドホンを付けた。不似合いな組み合わせだったが、井深名誉会長は音質に満足した。
盛田会長(当時)もこれに着目した。録音も出来ないこの中途半端な製品に新しい可能性を見出したのだ。盛田会長はこれを商品化するために社運を賭けた。 そして1979年に「ウォークマン」が誕生した。
▲ウォークマンは発売と同時に世界的なヒット商品になった。ポータブルプレーヤーという完全に新しい市場を開拓したソニーは「世界のソニー」となった。いつでも、どこでも誰も気にする必要のない「自分だけの音楽」は世界中の若者文化を変えた。米国の大学では再生機やバンドなしに各自がウォークマンから流れる音楽に合わせてダンスをするダンスパーティーが流行した。「ウォークマンダンス」だ。
▲「ウォークマン(walkman)」は「歩きながら音楽を聞くことができる」という意味だが文法的には合わない和製英語だった。母体がプレスマンで当時、映画『スーパーマン』がヒットしたこととも関係があった。しかし、海外でも通じるかという不安があった。そのため「サウンドアバウト(soundabout)」といった代案もあったが、「ウォークマン」があまりにも有名になったおかげで、これ以上悩む必要がなかった。1986年には英国のオックスフォード辞書にも登場した。
▲ソニーが3月に埼玉工場を閉鎖して日本国内のウォークマン・カセットプレーヤーの生産を終了することにした。米アップルの「iPod」に日本市場の半数を占められるほど、ポータブルプレーヤー市場で悪戦しているためだ。ソニーはカセットテープの代わりにコンパクトディスク(CD)とミニディスク(MD)を利用したウォークマンを相次いで発売したが長くにわたって市場の支持を得ることは出来なかった。
ウォークマンの成功に酔い、根本的な発想の転換が出来ないのだ。ソニーは結局、インターネットやMP3という新しく巨大な潮流を逃してしまった。3億台が売れて商品という枠を超え「文化」となったウォークマンも、いつの間にか忘れられた存在になった。市場の審判は冷酷で厳正なようだ。
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