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歴史的事実を無視する時代劇(下)

◆美化したり、歪曲したり 

 MBCテレビの『イサン』は、主人公の正祖と貞純王后との関係を対立の構造で描いているが、これもまた事実ではない。正祖実録15巻、正祖7年(1783)に「王大妃に尊号を贈る」という内容が登場する(『正祖実録』巻十五、正祖七年三月戊午「加上尊号于 王大妃」)。王大妃とは先王の妃を呼ぶ言葉で、正祖が貞純王后の称号をさらに高めて呼び、正祖が貞純王后を丁重に遇したことを知ることができる。貞純王后がドラマの中で、イサンが即位することになったという話を聞き、「命を奪わなければならない」と叫んだ場面は結局、面白さ優先の歪曲だったというわけだ。

 小さな子どもや青少年に歪曲された歴史観を植え付けかねないという心配も多い。現在、中学・高校の韓国史の授業時間は、10年前に比べ1週間当たり1時間ずつ減っている。歴史ドラマを見て歴史的事実を誤解する可能性も、それだけ大きい。視聴者のチェ・チョンスンさんは、KBSの掲示板に「子どもたちと一緒に勉強するために『大王世宗』を見ているが、番組の中で蒋英実(チャン・ヨンシル)が恋愛ばかりしているように映り、戸惑った。歴史的事実に則ったドラマを作り、子どもたちの教育にも無理がないようにして欲しい」と書き込みを残した。

 ソウル教育大社会教育科のイム・ギファン教授は、「ドラマであるためフィクションが一部加わるのはやむを得ないが、歴史の基本的なあらましと状況を越える加工は混乱を招く。歴史学界の既存の解釈を完全にひっくり返すほどの描写まであり、戸惑ってしまう」と語った。

ソン・ヘジン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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