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2008年11月21日

◎スリップ事故多発 暖冬で忘れる雪道の怖さ

 暖冬に慣れてしまったからだろうか。今季一番の冷え込みとなった二十日朝、北陸各地 で雪によるスリップ事故が相次いだ。石川県内で同日朝までの二十四時間に発生した十六件のスリップ事故は、すべて普通タイヤの車だった。富山県内でも多発し、十九日午後には富山市で冬用タイヤを着けていないワゴン車ががけ下に落ち運転者が重傷を負った。雪道でブレーキが効かない恐怖は、車を運転する北陸人なら、程度の差はあれ経験しているはずだが、融雪装置の普及や温暖化の影響で、雪を甘く見るようになってしまったとしたら、ぞっとする。

 今にも雪が降りそうな空模様で、普通タイヤのままなら車に乗るのをやめる。そんな天 候で、車に乗らねばならないのなら、早めにスノータイヤに換えておく。いくら雪が少なくなっても、それが雪国に住む者の常識だろう。冬本番はこれからである。「飲んだら乗るな」ではないが、「降ったら乗るな」「乗るならスノータイヤで」を実践したい。

 確かに今回は、平年よりもかなり早い初雪の到来で、油断があったのかもしれないが、 気象台からは、厳しい冷え込みになり山間部を中心に雪が降るとの予報が出されていた。情報をしっかり把握し、タイヤ交換にかかる時間や費用を惜しむことなく、万全の備えを心掛けるのが、雪道を走るドライバーのマナーであろう。

 石川県、富山県とも、県道交法条例施行細則で、積雪または凍結した道路を普通タイヤ で走行することが禁じられている。警察や道路管理者は、他地域の人だけでなく、県内ドライバーも案外知らないこのルールを、取り締まりやキャンペーンで徹底させたい。

 今年夏に全線開通した東海北陸自動車道では十九日、中央線をはみ出した軽乗用車がバ スと衝突し軽乗用車の女性が死亡した。路面は積雪三センチ程度でチェーン規制が出ていたが、軽乗用車は普通タイヤだった。山間部でトンネルが続く同自動車道は、降雪時などは場所によって路面状況が激変する。新しい道路で、不慣れな北陸の人も多いとみられるだけに、関係機関は注意を喚起してほしい。

◎株価再び8千円割れ GM破たんが懸念材料に

 ニューヨーク株の八〇〇〇ドル割れにお付き合いするかのように、日経平均株価が再び 八〇〇〇円の大台を割り込んだ。欧米の金融システム不安が依然として解消されず、実体経済の悪化は日に日に深刻さを増している。なかでもゼネラル・モーターズ(GM)など米大手自動車三社の経営破たん懸念が世界的な株価の下落要因になっている。米国は公的資金を投入するのか、それとも米連邦破産法を活用した再建の道を歩ませるのか、方向性を示す時期にきているのではないか。

 経営難に陥っているビッグスリーについて、民主党は米上院に最大二百五十億ドル(二 兆五千億円)の低利融資を行う法案を提出した。GM会長は議会公聴会で、一社でも破たんした場合、三百万人の雇用が奪われると証言したが、意見はまとまらず、採決は見送られた。ダウ平均が五年八カ月ぶりに八〇〇〇ドルを割った背景には、現実味を帯びてきたビッグスリーの破たん懸念がある。

 救済法案への支持が広がらない理由は、販売台数が現状のまま推移した場合、二百五十 億ドルの融資が半年で無くなる点にある。経営責任の追及抜きで、支援することにも批判があり、議会内では、オバマ政権が発足する来年一月二十日以降に問題を先送りする案も検討されているという。

 しかし、GMの運転資金は年内中に枯渇する可能性がある。こんな爆弾を抱えた状態で 、日米欧や新興国の株式市場が上向くわけがない。株価が歴史的な安値を付けているのに、投資家がビッグスリーの破たんリスクを恐れて、買うに買えないのである。

 米連邦破産法の適用を受けることになった場合、世界の株式市場は大揺れになるだろう 。ただ、米連邦破産法は日本の民事再生法とよく似ている。債務の大幅カットなどで、再建できれば、現行よりはるかに競争力が増すとの見方もあり、マイナス面だけではない。

 一番良くないのは、どっちつかずのまま時間だけが経過し、いたずらに体力をすり減ら していくことだ。米議会はどの道を選択するのか、早急に決断してもらいたい。


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