第8回 気象情報と位置情報を活用した災害対策ソリューション
前回のコラムでは、災害時における迅速な意思決定の重要性について述べた。今回は、迅速な意思決定のための有力な支援手段の一つとして、気象情報と位置情報を活用した携帯電話の防災ソリューションを紹介する。 通信網が過負荷状態になる前に関係者にメールを送る非常事態が発生した場合にまず必要なのは、災害対策本部のメンバーに対して、非常事態の発生を迅速に伝達し、あらかじめ決めてあった役割を遂行可能かどうかの返答を得ることである。災害発生時の初動体制を迅速に確立するためだ。 特に、予兆なく発生する地震に関しては、地震直後に発生する通信網の過剰負荷により、対策チームのメンバーに対して連絡を取ることが難しくなると考えられる。そこで、気象情報支援センターの地震情報と連動した形で地震発生直後に各メンバーの携帯電話に通知を行うという方法が考えられる。こうすれば、通信網が過負荷状態になる前に、各メンバーに対して初動体制に向けての連絡を完了できる可能性が高まる。 まず、気象業務支援センターより、地震、警報等の防災気象情報データをリアルタイムに受信できるようにしておく。一方、緊急通報サーバ上では、必要なメンバーに防災気象情報を電子メールで配信できるように設定しておく。こうすれば、配信を登録されているメンバーは、防災気象情報を携帯電話でほぼリアルタイムに受信できる事が可能となり、災害発生時の初期情報収集に関する時間短縮や、メンバーの安否確認が素早く行える。
このソリューションは、携帯電話を使うことによって、以下のような強みを発揮することができる
カメラやGPS機能のさらなる活用に期待今後、携帯電話に標準的に装備されているカメラ機能や、今後標準装備となるGPS機能を用いて、初動体制確立後の情報収集に関する業務支援についてもスムーズに行えるような仕組みを構築することができれば、さらに効果的なソリューションとなる。具体的には、画像やGPSには以下のような活用方法が考えられる。 ・画像の活用──カメラ付携帯電話を活用した情報収集機能の追加 ・GPSの活用──自己位置通知、第三者検索を活用した、初動体制確立後の業務指示支援機能の開発
携帯電話の防災ソリューション、今後の課題既に広く普及し、日常的に使われている携帯電話というデバイスは、うまく活用できれば災害時にも有効に機能しそうだ。とはいえ、今回紹介したソリューションも含め、現状、携帯電話を使った防災ソリューションは、キャリア等の通信事業者のサービスレベルの下でしか動作は保証できない。また、大規模災害発生時には、そもそも携帯電話が使用できなくなる状況も考えられる。 利用者はこうした制約を理解したうえで導入を検討することになる。携帯を活用した防災ソリューションの今後の大きな課題は、「大規模災害で携帯電話が使用できなくなる」という条件の下において、代替連絡手段や情報収集手段を、いかに携帯電話を利用した災害システムに組み込んでいくかにあるといえるだろう。 キーワード
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