政治家に圧力かける財界
不満を持ちながらも、無関心を装い選挙で投票もしない国民。日本と米国の投票率の低さをみると、両国の政治家が、スポンサーである財界のための政策をとるのは当然の帰結と言わざるをえない。米国では、次期大統領選挙で民主党がブッシュ共和党政権にとって代われば、政策も変わるという見方がある。しかしクリントン政権時代にどんな政策がとられたか、事実を折り曲げてはならない。
クリントンは米国の産業を空洞化させた北米自由貿易協定(NAFTA)を発効し、財務長官にゴールドマン・サックスの会長だったルービン氏を採用した。金権政治はブッシュ政権で加速したが、その傾向は民主党から引き継いだもので、米国の二大政党制の政策に大差はない。
現在、米国経済の主流であるシカゴ学派は、自由市場主義を信奉する。その意味することは、リスクをとる自由、そしてそれによって得た利益は自分たちの手中におさめるが、損失がでれば責任は政府や納税者にとって欲しいというもので、それが彼らの定義する「自由競争」であり「自己責任」である。米国政府は9月、サブプライムでファニーメイとフレディマックを政府管理下に置いた。合わせて1兆6,000億ドルもの債務を抱える両社を管理下に置く、米国史上最大の企業救済劇だった。
米国に追随する日本政府と米国が最大の市場の日本企業も、シカゴ学派を信奉している。しかし日米社会をみれば、自由という名のもとで自己規制は働かないし、市場を自由にすることは不均衡で二極化した格差社会を作ることは明白であろう。サブプライムがまさにそれで、借金返済不能から、立ち退き、破綻という道をたどる一般の米国市民は急増する一方で、貸し手には救済が用意されるからだ。
この道筋をつくったのも民主党政権である。クリントンは1999年、金融近代化法によって1929年の大恐慌の経験を踏まえて作られたグラス・スティーガル法の撤廃など、大幅な金融規制緩和を行った。こうして、規制があった時代には保守的な経営をしていた金融業界は、簡単に焦げ付く、しかし短期間に経営者に大きな利益をもたらす貸し付けに走ったのである。低金利と甘い融資で返済能力のない人までが住宅を購入した米国では、2000年から2006年の6年間で、住宅価格は2倍に値上がりした。
「シカゴボーイズ」とよばれるシカゴ学派の経済学者が推進する自由主義経済の行き着く先は、資本の剥奪により、持てる者が全てを所有する社会、一般の労働者は民営化による社会保障の削減、税のフラット化による格差社会だ。
政府の役割は簡単に言えば、市場が公正に機能するよう規制をすることである。そして貧しい人を引き上げ、誰もが自立できるような基盤を作ることだ。シカゴ学派に洗脳された人は、規制は悪で自由こそ善だというだろう。しかしシカゴ学派エコノミストによってとられた政策が日本を格差社会にし、また自由の名の下、利益追求のために企業がおこしたさまざまな犯罪をわれわれは嫌というほど見てきた。政治家の語る美しい公約ではなく、貧富の格差や新聞をにぎわす企業犯罪に政治家の政策の真実が表れている。
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