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【次代への名言】11月20日・小川環樹訳・岩波文庫『三国志』

2008.11.20 03:07

 ■「きゃつは天地造化(てんちぞうか)の功をうばい、鬼神不測(きしんふそく)の術をもった奴じゃ」(小川環樹訳・岩波文庫『三国志』)

 

 人形劇や映画、ゲームの素材にもなっているからおなじみの方も多いだろう。正史ではなく物語の方の『三国志』は、1800年前のきょう、揚子江を舞台に前半のクライマックスを迎える。敵役・曹操率いる80万の大軍が、孫権・劉備の連合軍の焼き打ちの計で壊滅的な打撃を被る「赤壁(せきへき)の戦い」がはじまるのだ。

 冒頭ことばの主は孫権軍の総司令官、周瑜(しゅうゆ)。「きゃつ」とは劉備の軍師、諸葛亮(しょかつりょう)(孔明(こうめい))。彼が「この季節は無理」とされた火攻めに必要な東南の大風を呪術によって呼び起こしたとき、周瑜はそう叫び、のちの憂いを絶つために殺害しようとする。そこは孔明、すべてを察して危地を切り抜けるのだが、小説とはいえ、このあとも彼の神業が続くため、近代中国を代表する文豪、魯迅(ろじん)の孔明評は「智多けれども妖に近し」である。

 われわれが親しんでいる『三国志』は遅くとも9世紀初めに講談のような形で誕生し、それから何百年もかけて、現在のような物語に収歛(しゅうれん)されていった。本来、武人である主人公の劉備が仁愛深い礼節の人だが、少し頼りなく描かれているのは、それが中国の民衆がはぐくむ理想の君主の姿だったからだという。その伝統はいまも生きている−と思いたい。

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