「もうこんな時間に」「まだ、これだけか」。同じ時の経過も人によって感じ方が違う。楽しいと短く、退屈な時は長く感じると思っていたが、そうばかりではなさそうだ。
「一年は、なぜ年々速くなるのか」(竹内薫著)に、作家鈴木光司さんの時間を速めない工夫を紹介している。日、週、月単位などで生活に変化や彩りを添えるよう心掛けることだそうだ。
楽しいことや興味あることは短時間で終わってしまう感じだが、後で振り返ると充実感が残って一年を長く感じさせる。逆に何もせず退屈な時や多忙でも達成感が得られない時などは、長く感じても印象が薄れて一年では短く感じるというわけだ。
今、時の動きに人一倍敏感なのは永田町の政治家たちだろう。早く衆院解散・総選挙に追い込みたい野党には、なかなかその時がこない焦りがある。臨時国会の会期末を控え、「逃すものか」と攻勢をかける。
麻生太郎首相や与党は、内閣支持率の低下もあって解散を先送りしたい。「何とかこの場を切り抜けよう」と、時の経過を長く感じていることだろう。
慌ただしさとは裏腹に、解散の時期も経済対策への迫力も見えない。ずるずると空しい選挙戦略ばかり見せられたのではたまらない。今年の時の動きを政治が一気に縮めてしまうのだろうか。