母体救急連携システム構築を―日産婦学会・救急学会が共同提言
日本産科婦人科学会と日本救急医学会は11月18日、周産期医療機関が妊婦の緊急時に連絡する救命救急センターをそれぞれ決めておくなど、二、三次医療圏ごとに地域の実情に応じた母体救急の連携システムを構築することなどを求める共同提言をまとめた。連携システム構築のために、医療側と行政側で行っていく作業を明確に示している。相次ぐ妊婦の受け入れ困難などの問題を踏まえ、両学会が母体救急について協議してきた内容をまとめたもので、20日に厚生労働省が開く「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」にも提出される予定だ。
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「地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する提言」と題する共同提言は、母体救急の体制整備のために今後検討していくべき課題として、▽国及び都道府県における母体救急担当部署と責任体制の明確化▽救急医療体制整備の検討▽都道府県における周産期医療関係者と救急医療関係者の交流の促進▽地域における周産期医療施設と救命救急センターの配置、連携に関する基礎調査▽周産期医療関係者と救急医療関係者の症例検討の実施▽施設内連携を深める方策についての検討▽救急医療の基盤を強化するための施策の遂行▽都道府県における母体救急連携システムの立案→構築−の8項目を挙げている。
母体救急のケースが発生した際、スムーズに各医療機関が連携できるよう連絡体制を整備すべきとした。例えば、周産期医療機関ごとに緊急時に連絡する救命救急センターを決めて必要な情報交換をしておくことや、緊急時には周産期医療機関が周産期母子医療センターを介して救命救急センターと連携できるよう、総合周産期母子医療センターは救命救急センターと日ごろから密接に連携しておくことなどを示している。
また、重症の患者を治療する場合には、国公立病院の医師が別の医療機関で治療を行う必要があるケースがあるとして、公務員の兼業を禁止している法律上の規定の見直しも検討事項に掲げた。加えて、一度周産期母子医療センターで受け入れて入院した患者の場合、救命救急センターに搬送、治療されても救命救急入院料の算定対象にならないとして、診療報酬上の問題も解決すべきとしている。
このほか、救急医療機関と周産期医療機関の連携状況などに関する調査の実施や、合同症例検討会の設置などのほか、行政や医師会、消防関係機関の担当者なども加えた合同検討会の設置を要望している。
提言の最後では、こうした母体救命救急体制を整備していく際、都道府県レベルで必要になる作業について医療側と行政側がそれぞれ担う事柄を示した。医療側は、周産期医療と救急医療の交流促進や症例検討、地域連携システムに関する合意形成などを、行政側は、周産期医療と救急医療関係者の交流、症例検討の場の確保、協議枠組みの設定、地域連携システム構築の推進などをそれぞれ行うとした。
両学会は、昨年に奈良県で妊婦が救急搬送中に死産した問題を受け、救急医療と周産期医療の連携についての協議が必要として準備を進めてきた。厚労省で関連する懇談会が開催されており、これと歩調を合わせるために緊急に提言をまとめた。
更新:2008/11/19 21:59 キャリアブレイン
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