民主党は18日、参院外交防衛委員会で予定していたインド洋給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案の採決に応じず、参院審議は空転した。17日行われた麻生太郎首相と小沢一郎代表との党首会談が決裂したのを受けたもので、臨時国会の行方は混とんとしてきた。
混乱の責任はまず麻生首相にある。党首会談で小沢氏が総額2兆円の定額給付金などを含む08年度第2次補正予算案を今国会に直ちに提出するよう求めたのに対し、首相は「今の段階で答えることはできない」と明言を避けたからだ。
麻生首相は「政局よりも政策」、「衆院解散より景気対策」と強調し、解散・総選挙を先送りした。
ところが、景気対策が緊急課題と言いながら、自民党内では補正予算案を今国会には提出せず、年明けの通常国会に先送りし、今月末までの臨時国会の会期も延長せずに閉会させるとの声が強まっている。首相が明言できなかったのは、そのためだろう。
毎日新聞は目的も効果もあいまいな定額給付金は白紙に戻すよう主張してきた。しかし、政府・与党が別の対策を作り直すのならまだしも、単に先送りするというのでは、まったく筋が通らない。これこそ政治空白というべきである。
しかも、対策には中小零細企業への資金繰り支援も含まれている。多くの中小零細企業が年が越せるかどうか厳しい状況に追い込まれているから盛り込まれた対策のはずなのに、これも先送りするというのだ。
なぜ先送りか。
定額給付金は既にほころびが次々と明らかになっている。与党側には厳しい審議を乗り切る自信はないようで、会期延長した場合には、いよいよ野党に追い込まれた形で衆院を解散せざるを得なくなる可能性がある。そんな不安があるのだろう。要するに政策でなく、「政局判断」なのだ。
もちろん、民主党もほめられたものではない。
民主党はあれだけインド洋での給油活動に反対していたのに、「早期解散をうながす」との理由で衆院では、ろくに審議もせずに改正案を通過させた。解散がないとみるや一転、採決せず、日程を引き延ばすというのでは「民主党も政策は二の次だ」と国民に見られても仕方あるまい。
米国発の金融危機の影響は日本でも日増しに深刻になっている。世界各国が協調して乗り切ろうとしている最中に、このまま与野党は、国民不在のがまん比べを続けるというのだろうか。
与野党が国会を動かせないのなら、有権者が動かすしかない。やはり、一刻も早く、総選挙で国民の信を問うべきだと重ねて指摘しておく。首相は民主党の対応を批判するより前に、まず解散から逃げないことである。それが「政策優先」の近道である。
毎日新聞 2008年11月19日 東京朝刊