しあわせのトンボ

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しあわせのトンボ:子宮があぶない=近藤勝重

 ぼくも編集長をやったことのある「サンデー毎日」が創刊以来初めて女性の編集長になった。

 どちらかと言えば男くさい総合週刊誌が、女性の手でどう変わるか。就任1カ月の紙面に関心を払ってきたが、そんななかで注目したのは11月9日号の特集「子宮があぶない!」である。正直、やるな、と思った。

 妊娠を伴わない排卵の繰り返しによる生理トラブル、潜在患者200万人と言われ、ひどい生理痛を伴う子宮内膜症、40歳以上なら4、5人に1人が持っているとみられる子宮筋腫、若年層で急増中の子宮頸(けい)がんなどを取り上げ、「女と男が今すぐやるべき10カ条」を列記する。

 と書くと、なにやら「サンデー毎日」の宣伝めくが、そのつもりはない。じつはぼくも専門家諸氏が「子宮があぶない」とおっしゃるのを聞いていたし、産科医不足からくるお産の悲しいニュースにも接して、タイムリーなその特集にわが意を得る思いだったのである。

 記事にある女性のライフスタイルの変化や今日の男女の性状況のほかに、専門家のみなさんはストレスの増大、冷暖房の普及、高カロリーの食生活……と衣食住全般にわたって人体を、ひいては子宮を冷やす原因を次々と挙げ、それらが人体の血行不良をもたらし、子宮のトラブルを招いていると案じている。

 「頭寒足熱」、つまり頭を冷やし、足を温かくすることをすすめるこの言葉は、もともと冷え性の女性には心がけたい健康法であろう。しかし近ごろの女の子たちはどうだろう。そんなことよりファッション命というわけか、頭に帽子、首にはおしゃれなマフラーをぐるぐる巻いていても、スカートの丈は年々短くなって、見るからに寒々とした下半身の子もいる。

 このコラムでストレスで生じる自律神経の不調は免疫力を低下させ、がん発症にもつながると書いたことがある。冷えもまたその経過をたどる可能性があるのは、医学の世界ではもはや常識的な事柄であろう。逆に言えば、体を温めることが健康を保つうえで極めて大切だということだ。

 人類を誕生させた地球は熱くなる一方で、人を宿す子宮は冷たくなっているという皮肉。周囲でその話をすると、「地球より子宮ということか」と妙に感心されたが、この現象、先々に何をもたらすのだろうか。(専門編集委員)

毎日新聞 2008年11月19日 東京夕刊

 

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