◎第二次補正予算 会期延長して提出するのが筋
定額給付金の支給や中小企業向けの融資枠拡大などを柱とした第二次補正予算案は、で
きるだけ早く成立させる必要がある。民主党の小沢一郎代表が党首会談で、今国会での提出を求めたのは当然であり、景気対策こそが優先順位の一番手と言ってきた麻生太郎首相が提出を渋るのは筋が通らない。
民主党は会期を延長して、主導権を握る参院で審議を引き延ばし、麻生政権を追いつめ
る狙いだろう。新テロ対策特別措置法改正案を「人質」に取るやり方は感心しないが、だからといって、これほどの重要法案の提出を先送りする理屈も立たない。麻生首相は第二次補正予算案を速やかに提出し、野党と正面から向き合った方がよいのではないか。
急転直下の党首会談で、予算案の提出を迫る小沢代表に対し、麻生首相は「今の段階で
は明確に答えられない。出せるように努力している」と答えた。補正予算案を出すと、会期の延長は避けられなくなる。それも補正予算の自然成立に一カ月、関連法案の成立に六十日必要だから、大幅延長が想定される。そうなれば、田母神問題などを攻撃材料に、「ねじれ国会」の泥沼が再現されることにもなりかねないだろう。
与党が三十日に会期を閉じる今国会を終わらせ、一月上旬に通常国会を召集して補正予
算を提出する方向に傾いたのは、野党の攻撃をかわす目的だったのだったのだろうが、そのために補正予算案の成立を遅らせるのは、ご都合主義と言わざるを得ない。世界同時不況の足音が高まるなか、各国は景気対策に懸命に取り組んでいる。日本だけが景気対策を先送りにして、知らぬ顔でよいはずがない。景気対策優先は、解散を先送りするための口実だったと言われても反論できないだろう。
定額給付金は、冷え込んだ消費マインドを温める効果がある。中小企業向けの融資や保
証枠の拡大、住宅ローン減税も景気を下支えする効果が期待できる。補正予算を一刻も早く成立させないと、景気はますます悪くなる可能性がある。麻生首相は自らが発した言葉に責任を持たねばならない。
◎21世紀美術館入館増 三つ星効果を追い風に
金沢21世紀美術館の開館四年目の年間入場者が百五十万人を突破し、一年目の水準を
取り戻したことは、城下町の中心部で異彩を放つ斬新な展示内容とともに、現代アートに限らず、市民ギャラリーなどで開かれる多彩な展覧会に多くの地元ファンが足を運んだ成果であろう。パリのルーブル美術館との間で合同展も視野に入れた交流に道筋がつき、国際的な認知度を高める効果が期待される。ミシュランと並ぶフランスの観光ガイド「ブルーガイド」で、最高ランクの三つ星を獲得したことも追い風に、欧米を中心に幅広い客層獲得を図ってもらいたい。
金沢21世紀美術館では、昨年十月九日から今年十月八日までの一年間に約百五十二万
人が訪れ、一年目の約百五十七万人に次ぐ入館者数となった。
今回は、ほど近い石川県立美術館の休館期間と重なったという事情もあるにせよ、金沢
城や兼六園に囲まれた異空間としての存在感、さらに、現代美術展をはじめとする地元総合展やジャンルにこだわらない展示の機会を提供するなど、美の交流スペース的な役割が認知されたことも市民に浸透できた証しであろう。
現在、国内外のアーティストが、空き店舗や町家などを活用して作品を展示する独自企
画「金沢アートプラットホーム2008」も開催中で、金沢のまちなかのにぎわい創出の役割も担っている。伝統と現代を兼ね備えた多様な金沢の魅力づくりのシンボルとして三つ星に輝いたとも言えよう。
ルーブル美術館との交流が軌道に乗れば、世界レベルで動向が注目されるだろうし、三
つ星効果も手伝って、目の肥えた海外の愛好者が訪れる機会も増えるに違いない。それだけに厳しい審美眼を持つ欧米客を満足させる充実した内容が求められよう。
今後は、児童生徒を含めた幅広い美の交流広場の機能を持たせながら、新しい金沢のア
ートの発信基地としての評価を高めるために、地元の良き美術工芸の伝統を取り入れた柔軟で現代的な切り口の企画展も考えてもらいたい。