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2008年11月19日

 事件は感染する。ひき逃げ、大学生の大麻吸引、家族間殺人など、脈絡もなく各地で起きるのを見るたびにそう思う

極端な事件が報道された途端、それまで記事にならなかった類似の小事件が表に押し出されるケースもないではない。家族間の事件も、外からは分からない、その家なりの事情があるのだろう。が、多くの事件には、共通する社会病理が潜んでいる

先日、金沢で講演したプロデューサーの石井ふく子さんが「サスペンスが恐くなくなった時代」と話していた。現実に、昨日のような不可解で残忍な連続事件が起きるからだ。死の重大さが分からなくなっている。石井さんが家族間の会話が多いホームドラマをつくる理由もそこにあるという

人間は自分に一番優しくしてくれる人を傷つけることが多い。身近な人を思う心の余裕は、家族間の何気ない会話から生まれ、漢方薬のようにじわっと効く。とげとげしい「事件菌」を退治するに違いない

夫婦ふたりだけにせよ、独身の独り住まいにせよ、肉親の思いやりや励まし合いを思い出し、それぞれの「ホームドラマ」をつくってほしい。


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