佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長(39)が、市が進める市民病院の民営化に反対する住民組織が市長のリコール(解職請求)運動を始めた場合、自ら辞職し、出直し市長選に再出馬する意向を固めたことが18日、関係者の話で分かった。住民組織はリコール手続きの開始を19日に正式表明する見通しで、病院民営化の是非を争点とした市長選は避けられない情勢だ。
リコール手続きに動いているのは、地元医師会の一部や市議でつくる「市民病院問題対策室」。同対策室は20日にも代表者を決め、選管に「請求代表者証明書交付申請」をし、22日から署名を始める予定。
市選管によると、仮に解職の賛否を問う住民投票を行うのに必要な有権者の3分の1に当たる署名が集まった場合、署名者の要件審査などを含め住民投票までに最短4カ月かかる。関係者によると、樋渡市長は市政の空白を避けるため、市長選を決断したとみられる。樋渡市長は、西日本新聞の取材に対し「(進退は)リコール運動がはっきりした段階で、市民のためにどうすべきかを考えて決める」と答えた。
市民病院の民営化をめぐっては、7月、一般公募で福岡市の福岡和白病院などを経営する医療法人財団の池友会(北九州市)に2010年2月に移譲することを決定。しかし、民営化方針が決定する前に樋渡市長が池友会関係者と接触していたことが判明し、地元医師会が「民間移譲ありきだ」などと反発していた。
地方自治法によると、市長の辞職が選管に通知された翌日から50日以内に市長選が実施される。
樋渡市長は06年4月に3市町合併に伴う市長選で初当選し、当時、全国最年少の市長となった。約1年半の任期を残している。
=2008/11/19付 西日本新聞朝刊=