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ひとインタビュー職業は「ミッキー・カーチス」やりたいことをやり続ける人生 第七十八回 ミッキー・カーチスさん

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歌手、芝居、そして落語

ロカビリー歌手として一世を風靡(ふうび)して50年。歌手のほか俳優、音楽プロデューサーとしても才を発揮し、第一線で活躍する日本ロック界の先駆者ミッキー・カーチスさん。今年1月には33歳年下の女性と3度目の結婚を果たし、話題をさらった。今年7月で70歳だが、「俺(おれ)は俺だから」と公私共にファンキーなオヤジであり続ける。映画「純喫茶磯辺」でもその圧倒的な存在感と独自の個性を放ち、味のある常連客を演じている。
(取材・文/井上理江 写真/田中史彦)

――映画「純喫茶磯辺」では、マスターに間違われる常連客の役。ひと言も台詞(せりふ)がない

そうなんだよ。台本を持たずに現場へ行ったのは初めて。役者というより、美術の一つとして参加した感じだね。吉田恵輔監督に「ミッキーさんのままでいいですから!」と言われた時は驚いたけれど、最初から俺をイメージして台本も書いてくれたらしい。

――現場ではどんな感じ

俺はあのまんま。喫茶店のカウンターに座って、娘とオヤジのやりとりなんかをのんびり葉巻をくわえて眺めているだけで(笑い)。現場は本当に楽しかった。どの人物もヘンにリアルで、どこにでもいそうな感じがいい。父と娘の照れくさい関係も短い台詞でよく表現されている。台詞が決して状況説明じゃないのがいい。のんびりした映画なんだけれど、会話にテンポがあるから観(み)ていて飽きないし。もともと監督は照明の人だから映像もきれいだしね。これまで130本ほどの映画に出ているけれど、トップ10に入るくらい、かなり気に入っています。

――喫茶店のダサさ加減も絶妙でいい

ゲーム付きのテーブル、ポスターも本当にダサくていいよね。吉田監督は独自の、絶対的な世界を持っている。勝手な想像だけれど、彼は日記を付けているんじゃないかなあ(笑い)。監督の前作「机のなかみ」も観たんだけれど、青春時代にありがちなことを本当にリアルに細かく描写していた。70歳になる俺でも「そんなこと、あったよなあ」なんて思い出せるような。それが彼の映画のリアル感につながっているんじゃないかな。だからこの「純喫茶磯辺」も、どの世代の人が観ても「わかるなあ」と思いながら楽しめますよ。

両親のDNAを受け継いで

――ロカビリー歌手としてメジャーデビューし今年で50周年

そもそも「男ならウクレレくらい弾けないとダメよ」と母親に言われてウクレレを始めたのが小学5、6年生の時。中学3年生からカントリーバンドに入って、進駐軍などを回っていたから、芸歴はもっと長いよ。親には大学に受からなければ芸能界はダメと言われたので、ヘンなことを言うなあと思いつつ、仕方ないので一生懸命勉強して成城大学に受かった。でも、一週間くらいしか行かなかったな。「卒業しろ」とは言われなかったから。で、そのまま音楽の方へ進んでいったわけです。

――それほどまで音楽の道に

中学生の頃から人を笑わせるのが好きで、よくカントリーや落語のモノマネをしていました。自分で歌っているほうが圧倒的にカッコイイし、銭になるし、モテる。動機はいたって不純(笑い)。そんなもんでしょう、誰だって。実の父親がピアノもベースも弾ける人だったからDNAっていうのもあるかもしれないけど、単に音楽活動が面白かったから続けたかったんだとも思うね。

――歌手デビューとほぼ同時期から、役者として映画にも出演しています

岡本喜八さんから「芝居をやらないか」と言われて、彼のデビュー作に出演したのが始まり。朝早いのが嫌でミュージシャンになろうと思っていたんだけれど(笑い)。母親に「歌手は年とって続けるのは大変だけれど、役者は80歳になっても80歳の役がある。長く続けられるから」と説得されたのもある。彼女は映画雑誌「スタア」の編集部にいて映画評論を書いたりしていたから、映画に関しては母親のDNAがあったのかもしれないね。

――音楽と役者、両方続けているのは

現場がとにかく好きなんだよ。どちらもみんなで一緒になって作り上げていく。そこが楽しい。だから、スタッフ側にもとても興味があるよね。とくに役者は、実体験ではなかなか経験したことのない役に挑戦できるのがいい。この間なんて死刑囚の役だったんだから。

――そればかりか落語家としても立川一門として高座に出ています

10歳の時から落語も聴いていてね。実は50年前、日劇ウエスタンカーニバルに出ていた時に、ちょっと落語もやっていたんだ。それを談志師匠が見ていたらしく、10年ほど前に「昔やってただろう。またやらないか」と誘われて、とうとう真打ちまで。凝り性だからちゃんと極めないと気がすまなくてね。古典でもバリバリ俺流にアレンジしているから結構おもしろいよ。

(写真)ミッキー・カーチスさんプロフィール

1938年東京生まれ。英国人の祖父を持ち、疎開時を上海で過ごす。高校時代から東京都内のジャズ喫茶や米軍キャンプで歌ううちに歌手として認められ、58年日劇ウエスタンカーニバルでデビュー、ロカビリー3人男として爆発的なブームを呼ぶ。同年、岡本喜八監督の「結婚のすべて」で俳優としてもデビュー。近年では96年「KAMIKAZE TAXY」で第69回キネマ旬報助演男優賞受賞。「お墓がない!」(98年)、「赤い橋の下のぬるい水」(2001年)、「荒ぶる魂たち」(02年)、「死に花」(04年)など、これまでに約130本の映画に出演している。音楽の世界では68年ハードロックバンド「サムライ」を結成し、ヨーロッパを拠点に70年まで活動。その後、音楽プロデューサーとしてガロやキャロルなどを発掘したことでも知られる。また、98年には「ミッキー亭・カーチス」として落語立川一門の真打ちに昇進。現在も高座に上がっている。日本屈指のエンターテイナーとしてTV、映画、コンサートと幅広く活躍中。

お知らせ

クセ者たちの魅力をリアルに表現したクセになる映画
「純喫茶磯辺」
7月5日(土)よりロードショー

高校生の娘・咲子(仲里依紗)と暮らす独身中年メタボ親父(おやじ)・磯辺裕次郎(宮迫博之)は、父親の急死で多額の遺産を手に入れ、突然、何の計画性もなく喫茶店経営を始める。そこへ若くて美しい素子(麻生久美子)と名乗る女性がバイトの募集を見てやってくるのだが、彼女によって父娘の磯辺親子は何かとかき回されることに。しかも、純喫茶磯辺にはなぜか、ひとクセもふたクセもある人々が集うようになり……。登場する人々はみんな、どこにでもいそうな雰囲気を漂わせ、どこかおかしく親しみを感じてしまう。とくにミッキー・カーチスさんは、ひと言もセリフがなく、ただ喫茶店の真ん中に座っているだけの常連客役なのに、圧倒的存在感があり、映画のリアリティーを広げている。この夏は、心から笑えてホロリと感動する「純喫茶磯辺」でちょっとひと息。夏の昼下がりにぴったりの映画です。

  • 公開/2008年7月5日(土)、テアトル新宿、渋谷シネ・アミューズほか
  • 監督・原作・脚本・編集/吉田恵輔
  • 出演/宮迫博之、仲里依紗、麻生久美子、濱田マリ、近藤春菜(ハリセンボン)、ダンカン、和田聰宏、ミッキー・カーチス、斎藤洋介ほか
  • 配給/ムービーアイHP
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