よく「何が一番やりたいのか?」なんて聞かれるんだけれど、とくにこだわっていなくて、やりたいことをやっているだけ。むしろ、こだわらずに何でもやることにこだわっている。昔ね、息子がまだ幼い頃、仕事へ行こうとする俺に「ミッキー・カーチスをやりにいくの?」って言ったことがあった。ミッキー・カーチスという商売をしていると思っていたみたいだね。でも、本当にそのとおり。計画性も何もなく自分の思い通りにしたいことをする。それが俺なんだよ。
やったもん勝ちっていう感覚がずっと心にある。おそらくすごい時代を通り過ぎてきたからだと思う。なんせ、国家総動員法が公布された年にハーフで生まれているんだから。戦時中、上海の国民学校へ行っていたんだけれど、顔が非国民だって言われたりね。とにかくつらいこと、悔しいことを幼い頃にたくさん経験してきているからこそ、世間がどう言おうと関係ない、何でもやってやろう、っていう思いは人一倍強いのかもしれないね。
人のことなんて気にせず、無理やりでもいいからやりたいことをやればいいんだよ。みんなやらないから「できない」って思うだけ。俺なんて、「70歳の着る服じゃない」とか言われても「うるせえ、俺の勝手だ、バカ野郎」って言うだけ。誰が何を言おうと俺は俺、平気。ロックンローラーだしね。
出会った時はペットの話で盛り上がったんだけれど、次のデートの話題は「ミイラの作り方」(笑い)。彼女は古代文明の謎が大好きで、今まではそういう話をデートですると相手に引かれてたらしい。ところが、俺はそういう話が大好きだったから答えられる。ジャンルは違ってもお互い音楽をやっているというのも大きかった。興味のあるところが非常に似ていたのがよかったんだと思う。
優しい感じがしたから。俺はすでに老後だし、先もそんなに長くないから、さすがにそろそろ落ち着きたいというのもあったし、ノリとか勢いみたいなものもあった。彼女はどうだろう? まず、間違いなく古いものが好きだね。って、お前は古物商かってツッコみたい感じだけれど(笑い)。まあ「レトロを生け捕り」とか言ってるよ。
食事が変わったね。「1日に30種類を食べなきゃいけない」と言われて、嫌いなものも食わなきゃいけなくなった。電気のつけっぱなしをしかられたり、葉巻の吸い過ぎを注意されたり。まあ、結婚するとどうしたって何かしら制約は出てくる。それはしかたないこと。でも、レトロな俺を気遣ってくれるのは本当にうれしいし、何より一緒にいる時間が圧倒的に楽しいからいいよ。お互いモノをつくるのが好きだから、同じマンションにもう一部屋借りて音楽室とアトリエを設け、そこで仕事の合間に彫金をしたり、彼女はピアノを弾いたり。そんなふうに過ごせるのも楽しいね。
今のところ考えてはいないけれど、いつか一緒に老人ホームなどを回って、そこで暮らすじいさんばあさんを元気にしたい、なんてことは考えている。実現できたら最高だね。
うーん、難しいね。金銭感覚がぜんぜんないから。でもまあ、時間としてもお金としても一番費やしてきたのはやはり、音楽だろうね。
誰でも大なり小なり何かしらにこだわっているから、特定の人を挙げることはできないね。たとえば毎朝の通勤で必ずこの道を通るとか、あるパターンを持つと楽でしょ。逆にまったく知らない道を通ろうとすると不安や恐怖が芽生えてくる。つまり、こだわりを持つっていうのは一つの楽(らく)を見つけることなんだよね。
その時代ごとに、松本清張だったり、手塚治虫だったりといろいろあるんだけれど、しいてここで挙げるなら、1950年代に読んだイギリスの冒険小説家イアン・フレミングかな。「ジェームズ・ボンド」シリーズが有名。おしゃれに生きるっていうのはこういうことだと教えてくれたね。最近、読んでいるのはノンフィクションものばかりだね。
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