事件・事故・裁判

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

元厚生次官宅・連続襲撃:東京・中野でも妻が重傷 宅配装った男に刺され

 18日午後6時半ごろ、東京都中野区上鷺宮2の元厚生事務次官の吉原健二さん(76)方玄関付近で、妻靖子さん(72)が宅配便業者を装った男に胸などを刺され、重傷を負った。同日午前には、さいたま市南区別所2の元厚生事務次官、山口剛彦さん(66)方玄関内で、山口さんと妻美知子さん(61)が刺殺されているのが見つかっており、警視庁と埼玉県警は、2人の元次官が同じような経歴を持ち、手口も似ていることなどから関連があるとみて捜査。警察庁は両警察本部を集めて19日午前、合同捜査会議を開く。

 ◇警察庁「年金官僚」警備強化

 政府筋は「年金を軸にした政治テロの可能性があり、警戒を強めている」と語った。

 さらに「今の段階で同一犯と決めてかかることはできない。仮に組織的犯行だったとしたら大変なことになる」と付け加えた。警察庁は、厚生労働省から名簿の提出を受け、10都府県の警察本部に警備強化を指示した。対象となるのは、事務次官や社会保険庁長官経験者に加え、年金局長など年金関係の幹部・元幹部約20人。

 調べでは、靖子さんは「宅配便です」という男の声で玄関を開けたところ、いきなり腹部やみぞおちなど数カ所を刃物のようなもので刺された。吉原さん方は夫婦と40代の長男の3人暮らしで、事件当時は靖子さん1人だった。

 玄関を上がった床に血痕があり、玄関内側で刺されたとみられる。靖子さんは、悲鳴を聞いた人の119番で駆けつけた救急車で運ばれる際「主人が狙われているかもしれない。危ない」と話したという。搬送先の板橋区の病院に吉原さんと長男が付き添っており、靖子さんに意識はあるという。警視庁は殺人未遂容疑で野方署に捜査本部を設置した。

 男は30歳ぐらいで身長約160センチ。中肉で野球帽をかぶり、宅配便業者のような服装をしていたという。

 吉原さんは86年から2年間、社会保険庁長官、88年から2年間、厚生事務次官を務めた。【佐々木洋】

 ◇2人の元次官、年金制度改正に道筋

 2人の元厚生官僚トップは、共に旧厚生省の年金局や官房の要職を務めた。10年の入省年次の違いはあるが、基礎年金制度の導入を決めた85年の年金制度大改正時には、吉原氏が年金局長を、山口氏が年金課長を務め、制度改正に道筋をつけた。その後も吉原氏が88年6月に事務次官に就任した際、山口氏は官房会計課長に就任。この時も直接の上司と部下として官房を取り仕切った。

 吉原氏が事務次官だったのは小泉純一郎元首相が最初に厚生相を務めた時で、2度目の厚生相在任中には山口氏が次官として仕えた。吉原氏は年金局長を2年間務めた後、社保庁長官を経て事務次官に就いた。山口氏は96年7月に保険局長となり、当時の事務次官の汚職事件を受けて同年11月に後任の次官に就任した。

 ◇埼玉の夫妻殺害、自宅前に足跡

 埼玉県警は18日、山口さん夫婦は殺害されたと断定、浦和署に捜査本部を設置した。夫婦は普段着で靴を履かず、玄関内で倒れていたことなどから、来訪者に応じた夫婦が玄関に出てきて相次いで襲われた可能性があるとみている。

 捜査本部によると、夫婦は玄関の土間部分で共に足を玄関口に向けてあおむけに倒れており、美知子さんは玄関側、山口さんは室内側だった。夫婦の胸には刃物によるものとみられる複数の刺し傷があった。一方、台所から血痕が見つかり、美知子さんのバッグに物色しようと触られたとみられる形跡があることが分かった。

 また、自宅前の路上から西へ50~60メートルにわたり血痕が付いた足跡が見つかった。犯人が徒歩で逃げたとみて調べている。【浅野翔太郎、小泉大士、西田真季子】

毎日新聞 2008年11月19日 東京朝刊

事件・事故・裁判 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報