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【産科医解体新書】(13)母になる自覚と健康管理 (1/2ページ)
医療が発達したといわれる今も、出産で命を落とす女性を残念ながらゼロにはできていません。健康で順調な経過をたどっていた妊婦さんでも、何があるか分からないのが出産の難しさです。ましてや、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などを合併している患者さんが出産で命を落とす危険は、健康な人よりも高いのは周知の事実です。ですから、患者さんには自分の健康状態を把握して、健康管理をしっかり行ってほしいのですが、実際にはそこから目をそらす方が少なくありません。
ある患者さんに、軽度の妊娠高血圧症候群の疑いがありました。重症になれば、高度な医療機関への母体搬送が必要になりますし、救命のために早産させることになります。こうした妊婦さんには、重症になる前の管理がなにより重要です。太りすぎると重症になる危険が高くなるので、体重増加に気をつけてもらうよう説明して、外来で厳重に管理することにしました。
ところが、患者さんは予定していた次の妊婦健診に来ませんでした。その後しばらくたって健診に来たときには、顔がむくみ、体重も十数キロ増加していました。ぼくは一瞬、同姓同名の別人かと思ってしまいました…。でも、ご本人は「ちょっと太った」程度にしか考えていないようでした。必要以上に食べ過ぎないよう口を酸っぱくして説明したのに、全く気にせず食事を取っていたようです。
この患者さんは結局、重症になり病気を発症してしまったので、急いで母体搬送先を探しましたが、受け入れ先はなかなか見つかりませんでした。患者さんはその時点になってようやく現実を理解し、精神的にも非常に参っているようでした。