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構造改革をどう生きるか

第160回
日本経団連の移民受け入れ策は亡国の政策

経済アナリスト 森永 卓郎氏
2008年11月17日

 10月14日、日本経団連が「人口減少に対応した経済社会のあり方」(PDFファイル)と題する報告書を発表した。政局や金融危機のニュースに隠れてしまったためか、ほとんどの新聞がこれに触れていないのだが、このなかに非常に注目すべき提言がある。それは「移民の受け入れ」だ。

 日本経団連は、以前から外国人労働者の受け入れについて積極的な態度を示していたが、今回のように「日本型移民政策」という表現まで使ったうえで、「外国人と日本人がともに、双方の文化・生活習慣の違いを理解しつつ、同じ地域社会の中で支障なく生活していくことが可能となるような環境づくりを進めていく必要がある」と、帰国を前提としない移民の受け入れを明確に提言したのは、おそらく初めてだろう。

 その根拠として挙げられているのが、人口の減少と高齢化の急速な進展である。報告書で引用している国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2055年の総人口は8993万人となり、いまより3割減少する。しかも、15~64歳の生産年齢人口は、さらに減少率が大きく、現在のほぼ半分になるという。

 こうした人口構造の変化によって、報告書が特に懸念しているのは、次の2つの事態である。1つは、消費が減退して経済活動が停滞すること。もう1つは,高齢化の進展によって年金制度や医療保険制度の運営が困難になることだ。

 そうした問題を解決するために、日本経団連は、若い外国人をどんどん日本に招き入れようという提言をしたわけだ。

 一応、報告書のなかでは、女性、若年層、高齢者を労働力として積極的に活用することも重要であるとは述べている。だが、報告書全体をよく読めば、移民受け入れにウエートが置かれていることは明らかだ。

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