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元次官宅襲撃:「年金テロか」…厚労省は重苦しい雰囲気

厚生労働省のある中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で2008年11月18日午後10時50分、馬場理沙撮影
厚生労働省のある中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で2008年11月18日午後10時50分、馬場理沙撮影

 旧厚生省の2人の元官僚トップ宅で18日、相次いで惨劇が起きた。さいたま市で元事務次官、山口剛彦さん(66)夫妻の命が奪われ、その発見から約8時間後、約14キロ離れた東京都中野区の元次官、吉原健二さん(76)宅で、妻靖子さん(72)が刺され重傷を負った。2人の元エリートは現役時代、ともに年金制度を担っていた。「これは年金テロなのか」。卑劣な凶行に厚生労働省は、重苦しい雰囲気に包まれた。

 厚生労働省は18日夜、人事課が中心となり、事務次官と社会保険庁長官の経験者へ安否確認と「宅配便を装った侵入者に注意を」と呼び掛ける電話を入れ始めた。深夜まで審議官以上の職員と、年金業務に関係する歴代幹部にも連絡を入れる。また、現役と歴代幹部の名簿を警察庁に提出し、警備を要請した。19日以降は入館者の身分照会を強化し、大臣室や事務次官室がある階の警備員を増やすとしている。

 国会対策の仕事をしていたキャリア官僚は、一報を聞くと「エーッ」と叫び絶句。その後、情報を確認する電話がひっきりなしにかかってきたが、「まだ何も聞いていない」と動揺した様子で対応していた。「これは年金テロでないのか、恐ろしい」と語るのが精いっぱいだった。

 以前に年金に関連する部署で働いていた一般職員は「年金制度に対する不満があるのかも知れない。けれど、物理的な暴力での抗議は絶対に許せない。仕事を切り上げて早く家に帰らないと心配だ」と不安げに話した。

 残業していた職員は、立ち上がってテレビのニュースを見ながら「いくら批判が出ているからといって、年金問題でテロなどあり得るのか」とつぶやいた。厚労省1階のロビーでは家族に戸締まりに注意するよう電話をかける職員の姿が見られた。

 ◇警察庁から一報、官邸に衝撃走る

 事件の一報が首相官邸にもたらされたのは午後8時ごろ。警察庁から漆間巌官房副長官に連絡が入り、漆間氏はただちに公邸で政府・与党連絡会議のメンバーと会食中だった麻生太郎首相に情報を上げた。

 8時半ごろには厚労省からも「山口さん夫妻が殺された事件は、それだけにとどまらないかもしれない。厚労省関係者で別の人がやられた。これは政治テロの可能性がある」との報告があり、伊藤哲朗内閣危機管理監らが官邸に駆けつけて情報収集にあたった。

 政府首脳は「大変な事態になった。民主主義の社会で許せない事件だ。拡大を防がないといけない」と指摘。自民党厚生族幹部は「2人とも年金の専門家。厚労省内には恐怖感が広がっている。政治テロだとすると大変な問題だ」と語った。

 ◇社保庁長官OB「自宅警備頼む」

 元社会保険庁長官で埼玉県内に住む高木俊明さん(67)は18日午後9時過ぎ、毎日新聞の電話取材に「山口さんの事件があって、何でやられたのかと思っていた。続いて別の元事務次官の妻が刺され、おっかなくて仕方がない。何が何だかよくわからないが、近くの警察署に自分の警備を頼もうと思う」と話した。

毎日新聞 2008年11月18日 22時04分(最終更新 11月19日 0時40分)

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